2019/8/6

「直に言葉を交わし続けられる場所」 山田織部

2019
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2016年の初回から3年間パラレルセッションに参加してくださっている建築家の山田織部さんから本イベントについての紹介文を寄稿していただきました。

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「直に言葉を交わし続けられる場所」
山田織部

特に意識が高いわけではない。
私が初めてパラレルセッションに参加したのは、お世話になっている建築家の方から、お誘いを頂いた事がきっかけである。

「パラレルセッションとは建築学会が建築に対する認識向上と理解の深化を目的に展開する建築文化週間の企画の1つで、当日に建築に関わる参加者が集い、建築に付随する複数のテーマに関して、議論を並走させる場である。」

と文面上では書くことができる。が、当初はどういったことをするのか想像ができず、 また、自分自身に議論できることがあるのかと不安もあり、参加する事を躊躇っていた。 何故、それでも参加したのかと問われれば、建築に対する単純な好奇心が原動力となったと言う事ができるかもしれない。

当日の状況は容易に文字に起こすことが難しい。あるいは、文字に起こすには非常に惜しい何かを含んでおり、参加しなければ分からない部分が非常に多い企画であるということを前置きしながら、まだ参加したことのない方々の参考になることを願い、記憶を頼りに振り返ってみたい。 まず、参加者はエントリーの際に自身が取り組んでいる事を簡易的な文章と写真でまとめ、プロフィールと共に提出する。 各参加者には提出された内容を元に委員会側によって3つほどのタグが振り分けられる。 例えば、「空間性」、「地方」、「マネージメント」、「職能の拡大」、「教育」といったようなタグである。 事前に振り分けられるというよりは、エントリー期間が終わり、参加者が出揃い、その全体が決定された段階で、その中に共通する興味関心がキーワードとして浮かび上がり、それが再びタグとして参加者の元に帰ってくるというような印象だ。

当日は少しずつ異なりながらも同じ興味関心を持つ参加者が各セッションに集まることとなり、そのチームで、設定されたテーマの元、セッションがスタートする。 最初はウォーミングアップのようにメンバーそれぞれの自己紹介と取り組んでいる内容の説明からスタートするが、時間が進むにつれ、前提とされたテーマを覆うように生の議論が建ち現れてくるのを感じたことが記憶に強く残っている。 そこで交わされる内容はどれも参加者が身をもって体験したことがベースとなっており、現実での上手くいかなさや、迷い、躊躇いなども含まれる。そこには文字に起こしたとしても到底書ききれないほどの生きた葛藤が詰まっていたのではないだろうか。 その後、ゲストメンターの方も加わり、若干の緊張感と共に本番のセッションが始まる。ゲストが来るたびに、一人ずつ自身の取り組みをプレゼンするところから始まるのだが、回を追うごとにメンバーそれぞれのプレゼンが洗練されていき、自分だけでなく、メンバーの活動への理解も深まっていく。 このようにゲストが入れ替わりながら、対話が繰り返され、うごめき、膨らんでいた議論が徐々に収束を迎える。

参加者が同一の場所、同一の時間を共有すること。 音声言語を使った対話によって言葉を交わす事。 それぞれのことは決して特別なことではない。

しかし、インターネットやスマートフォンが普及し、場所や時間を隔てた文字言語を用いるコミュニケーションの比率が圧倒的に増えた現代において、パラレルセッションという場は非常に贅沢で貴重なものなのかもしれない。

パラレルセッションは今年で4年目となる。 大きな流れは毎年変わらず、先述したように進む。一見、同じことの繰り返しに見えるかもしれない。しかし、そのことにより毎年の差異が浮かび上がり、それがある種の動きとなって立ち現れようとしているのかもしれない。

毎年、姿を変える生きた運動体である。 今年はどのような姿を見せるのだろうか。

 

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