2019/9/20

パラレルセッションズ2019_特別インタビュー1|森元気(セッション31)+山口陽登(セッション33)

2019
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今年で4回目を迎えるパラレルセッション。今回から導入されたセッションリーダー制を担う各リーダーへのインタビューを公開します。第1回は東京と大阪でそれぞれ設計事務所を主宰する森元気さん、山口陽登さんです。各テーマに込められた意図について、またパラレルセッションズに参加する理由などについて、過去3回すべての回に参加してきた山田織部氏が聞き手として迫ります。

 


 

山田:今回、ざっくり2部構成で、最初は自己紹介的なものを、ご自身が設定されたテーマの背景と絡めて、お聞きしたいと思います。もう一つは、セッションに参加するモチベーションは何か、そしてこれから参加する参加者へのメッセージや参加者への期待をお話ししてもらおうと思います。

 

森:名前は森元気です。個人の設計事務所を運営主宰しています。今回皆さん一緒ですけれども過去3回のセッションに参加していて今回が4回目です。テーマ設定については、それこそ1回目のパラレルセッションズで知り合った人たちと勉強会をしたり旅をしたりしていて、いろいろやりとりをしているんですけれども、その中で「組織」と言うワードが会話の中で出てきたことがありました。組織自体をデザインし直すべき時期なんじゃないかと言う話になったのがきっかけです。プロフィールに戻るんですけれども基本的には僕はいただいた仕事を請け負う従来型の仕事をしています。ただ一方で、もう少し能動的に働きかけて設計業をやっている方々とか、二足のわらじを履くようなやり方をしている方々もいて、そういうところからちょっといろいろ考えてみたいというのがおおよその流れです。

 

山田:きっかけとしては、その会話から出てきたキーワードから始まっていると言うことでしょうか?

 

森_:ワードがありつつも自分自身の状況といいますか、旧来型と言うのが正しいかわからないですけれども、一般的な来た仕事をやるというやり方に少し限界というわけではないですけど、そこの形すらデザインしていくようなこともあるんじゃないかと言うモチベーションもどこかあります。なので、せっかくこの機会をいただいたので考えてみようかなと言うところです。まぁタイトルがちょっと難しいんですけれども「違う仕事と設計業を同時に両立しています」と言うのはいろいろモデルがあるので、そうではない展開に持っていければいいなと少し考えています。

 

山田:なるほどです。そうしたら次は山口さんの方に聞きたいと思います。簡単な自己紹介とともにテーマ設定の背景をお聞かせください。

 

山口:大阪の上本町で設計事務所をやっています。ややこしくて申し訳ないですが、実は最近事務所の名前がシイナリ建築設計事務所からYAPに変わりました。プロフィールは大阪市立大学大学院を卒業した後、日本設計に約10年近く働いてそこから独立しました。先程の森さんの話とも少し関係するかもですけど、上町荘というシェアオフィスを運営しています。ざっくりと言うとそんな感じです。

 

山田:じゃぁ事務所もそこにある感じでしょうか?

 

山口:そうですね。運営しながらそこで働いている感じです。

 

山田:なるほどです。テーマが「ボランティアマインドは公共空間をどのように変えるのか?」ということですが。

 

山口:今、兵庫県の宝塚と言うところで、障かい者のための交流空間を、木村松本建築設計事務所と一緒に設計しているんですけれども、プラザ・コムという公益財団法人がボランティア施設を運営されていたんです。その運営をされている岡本さんという方に出会って、その人は自分の資金をどう使うかというときに、自分自身もボランティアでお金を出して、建物をつくって、その上でボランティアをする方のための拠点施設をつくっていらっしゃるんですよ。それはすごいなぁと思って。何十億と言うお金をボランティアで使っているわけですよ。そこで、自分が上町荘をなんで運営しているのかということを省みた時に、それは自分のビジネスのために運営していると言うよりも、ボランタリーな気持ちでやっていることに気がつきました。ここでプロジェクトと自分の状況が線で結ばれたようなところがあります。この間も住宅特集で住み開き特集をやっていたりして、これって現代的な人々の空間づくりのモチベーションの1つなんじゃないかなと思い始めました。
 それで、その根底にあるのは何なんだろうかというのを考えたときに、岡本さんの場合は阪神淡路大震災で多くのボランティアの人たちが働きたい、何かやりたいと思っているのに、それを支援するための施設がないということに気がついたとおっしゃっていました。なるほどと思ったんですけれど、その後東日本大震災があって、いろいろな活動を見ていくと、専門家も含めてボランティアマインドで動くという感じになっているなという気がしています。
 2度の震災を経て日本人にボランティアマインドというのが醸成されてきているんじゃないかというのが僕の仮説で、そう考えたときに、そういう人たちによって生まれた建築だったり空間が、今後どういう公共空間をつくり得るのかとか、それをどうやって継続することができるのか、みたいな事を議論すべきなのではないかなというふうに思っています。そういう自分なりの公共空間に対する問題意識があってこのテーマを設定しました。

 

山田:なるほどです。それは公共空間の利用者にもそういった精神が醸成されているということでしょうか?

 

山口:そうですね。利用者もそうですが、やはり建て主さんですね。他にもそういった相談が重なってたこともあって。例えば地主さんから土地が余っているんだけれど、どうやって使ったらいいかと相談を受けることがあって、みんなで使える共同の倉庫か何かを建てたらいいんじゃないですかって提案してみると「まぁ相続対策になるしねぇ。そういうみんなに使ってもらえる場所をつくれたらいいよねぇ。」みたいな。これは一昔前のバブル直後のすごい逼迫していた時期にはあり得なかったことだなぁと思うんですよね。

 

山田:今までのパブリックと言うのはみんながお金を出して税金でつくるものだった。けれどもボランティアマインドが、パブリックを生んでいるのではないか、と言うことですね。それでそこにどういった可能性があるのか。

 

森:なんか、公共性みたいなものを行政がつくらず、一個人が同意できるというか担保できるというのが、マインドからスタートしているのではないかということが現実に起きていると言うようなことですかね?

 

山口:そういったものが手応えとしてあるんですよね。スーパーボランティアを建築でやるという可能性ですかね。

 

山田:ありがとうございます。その可能性について、当日は議論したいということですね。じゃあ次の質問に移りますが、今回セッションリーダーの方々は、これまで3回連続でパラレルセッションズに参加している方々なのですが、そのモチベーションみたいなものをお聞きしたいです。森さんいかがでしょうか?

 

森:モチベーションですか笑。確か最初は同世代で集まると言うような感じだったと思うんですけれども。

 

山田:そうですね。最初は確か80年代生まれと言う縛りがあったかと思います。

 

森:そういうイベントがあるというのを何かで知って、該当しているし、事務所登録して最初の年だったと思うんですけれども、分野もへだてず建築関係と言う大きな枠組みで、かつ、何をするのかよく分からないと言う。よくわからないけれども、いろんな人が集まる場だったのでとりあえず行ってみようと言う感じですね。2回目、3回目となったときには、そこで知り合いが生まれたり人間関係が構築できて、あるテーマを議論できる瞬発的なおもしろさと同時に、同世代の人間関係が築かれその後も別の広範囲な議論ができると言うことのおもしろさを感じていて、3回連続参加しています。でもモチベーションといってもみんなそんなに変わらないんじゃないですかね。山口くんは何て言うんでしょうか。逆に山口くんは大阪から3回連続で参加しているのでそこは聞きたいです。

 

山口:なんでしょう。まぁ基本的には辻くんと川勝くんが大好きなんですよね(笑)。辻くんと川勝くんがやるのであれば行くでしょみたいな。好きなアーティストのライブに行くみたいな。もう少しちゃんと言うと、なかなか個人が個人として、大阪の人が大阪の人として東京のイベントに参加する機会というのはなくて、講演を聞きに行くとかであったり匿名的な存在としてその場に参加するというのはたくさんあったとしても、個人として大阪の人が東京のイベントに参加できるというのは意外とないので非常にありがたいイベントです。

 

山田:確かにそういう話ができる場所というのは、学生を終えると急激になくなるかもしれないですよね。

 

森:こういうのが仮にあったとしても、大体東京の人しかいないじゃないですか。まぁ言っても在来線で行ける範囲の人が集まれるくらい。僕のセッションだと毎回関西や愛知の方がいるんですけれども、やっぱり地域のせいなのか、その人の個人のせいなのかわからないですが、考えが結構違っていて地域性みたいなのものが出てきたり。その人のスタンスがその場に揃った時に全然違うものを瞬間的に味わうハラハラした感じは魅力ですよね。だから午前中は少し緊張して進むんですけど、午後になるとまぁいいかと言う感じになってきちゃって。

 

 

山口:最後は参加者への期待ですね。

 

 

森:まぁ期待することというか「気軽にボタンを押してください」と言う感じですかね。結構みんな構えちゃっているんですよね。「僕はそういうのいいんだよな」みたいな。そういうことではなくて日曜日の午後をちょっと同業の人と喋って、その後ちょっと飲むというか、まぁ飲み会みたいなもんですよね。もう少しフランクに構えずに、いろんな人に来てもらいたいなという感じです。そこからお互いにフィードバックできることがあると思いますし。

 

山田:山口さんいかがですか?

 

山口:テーマは堅く見えますが、気軽に参加してください(笑)。

 

山田:ありがとうございます。では今日はこのあたりで。当日の議論がたのしみですね。

 


森 元気 
1981年 生まれ
2004年 工学院大学工学部建築学科卒業
2008年 法政大学大学院工学研究科建設工学専攻建築学領域修了
2009-2014年 千葉学建築計画事務所
2015- 森元気建築設計事務所

 

山口 陽登
1980年生まれ
2003年 大阪市立大学工学部建築学科卒業
2005年 大阪市立大学大学院工学研究科都市系専攻修了
2005年-2013年 日本設計
2013年-2019年 シイナリ建築設計事務所
2019年- YAPに改称

 

山田織部
1989年沖縄生まれ。2013年琉球大学工学部環境建設工学科建築コース卒業。卒業後7年間、複数のアトリエ建築設計事務所、構造設計事務所、大手ゼネコン等に勤務と同時に、個人の設計活動をスタートさせる。2019年‐ 単身渡独。
[主な仕事] 下高井戸の学生寮の改修(2014)、麹町のオフィス改修(2019)、ほか。
[受賞歴] コロキウム形態創生コンテスト2013 優秀賞受賞、ほか。

 

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