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パラレルセッションズ2019_特別インタビュー3|伊藤孝仁(セッション28)+小泉瑛一(セッション32)

 

 

今年で4回目を迎えるパラレルセッションズ(PS)。今回から導入されたセッションリーダー制を担う各リーダーへのインタビューを公開します。第3回は横浜を拠点に活動するお二人、tomito architectureの伊藤孝仁さん、そしてon designの小泉瑛一さんです。各テーマに込められた意図について、またパラレルセッションズに参加する理由などについて、今回も過去すべてのPSに参加してきた山田織部氏が聞き手として迫ります。

 


 

山田:設定したテーマに関する背景であるとか、自身の活動と絡めてお話しいただけますでしょうか?

 

伊藤:僕が設定しているテーマは、「メディアプラクティスとしての建築は可能か」というもので、自分自身の日々の設計の中で抱えている状況とか、感じている事から出発しています。大きさに関わらずプロジェクト自体がすごい複雑化しているなかで、これまでのクライアントや設計者、施工者などの関係で整理できない背景の中で、設計者はどう振る舞うべきなのかを感じることが多くあります。

 

 それともう一つ、設計の過程で、例えばひょんなリサーチとか、設計に全然関係ないと思っていた地域新聞づくりみたいなまちづくり的文脈で語られるようなことが、新しいコンテクストやローカルなマテリアルとの出会いの契機になって、リサーチとかフィールドワークの一環だった新聞づくりが実は設計と切っても切れないものなのではないかと思っていた時に、「メディアプラクティス」と言う言葉と出会いました。その言葉に託しているのは、リサーチからデザイン、その先も含めて、結局人と人とのコミュニケーションの連続があるわけで、それを創造的に媒介する様々なメディア、例えば新聞もそうだし、設計図もそうだし、模型もそうだし、それ以外にもいろんなメディアの可能性があると思うんですけれども、メディアと言うものを介しながら自分とコンテクストをぶつけてプロジェクトが成立させていくと言うふうに建築を見ることができれば、何か新しい視点を持てるんじゃないかなと思い、今回のテーマを設定をしました。

 

 もう少し簡潔に言うと、リサーチが一度切れて、デザインが始まるのではなく、もっと混然一体というか、設計に全然関係無いリサーチが設計に結び付いたりとか、もっとダイナミックに、いろんな物事がコラージュされるような作られ方があるんじゃないかなという感じです。

 

tomito architecture「出来事の地図」

 

 

 

山田:抽象的なところから段階を経てある形が徐々にできてくるというようなものではなくて、意図していないところから繋がったり、そういったところから形が作られていくというようなことですかね。

 

伊藤:そうですね。事前参加者の一人に、青木淳建築計画事務所の竹内さんという方がいます。彼が最初に担当した十日町のプロジェクト(十じろう、分じろう)では、通常は現場監理のためにつくる現場事務所を基本設計時に作っていて、いろんなその場の文脈と出会って、プロジェクトを作っていく。設計現場事務所という空間は、建築を設計するうえでのメディア、いろんな背景や文脈との出会い方を設計しているというか。板坂さんは、図面というものを捉え直すことをされていて、今までの図面だと拾いきれなかった情報の拾い方みたいなことだとかも、思考の範疇に入れて考えていきたいですね。

 

山田:確か、門脇耕三さんが10+1の論考で『「2000年以降のスタディは他者性をどう取り込めるか」ということに集約されるのではないか』というようなことを書かれていたと思いますが、設計のプロセスにおける他者性というものをもっと広くとらえて、これまで対象外としていたかもしれない部分に焦点を当てて、それがどういったものなのかということであったり、その他者性がどこにあるのかであったり、そういった部分が思考の対象になっているな気がしたのですが。

 

伊藤:たしかに、今、それを結び付けて話してもらって、なるほどなと思いました。まさにその他者性というか偶然性とどう出会うかとか、コンテクストというのも静的な動かないものではなくて、生き物的というか、自分たちの文脈とどう出会うかというか、コンテクストとの出会い方をちゃんと意識的にデザインするということが、メディアプラクティスの重要なポイントだなと思いました。

 

山田:じゃあちょっとここで、小泉さんの方にお聞きしたいんですけれども、小泉さんのテーマが「市民参加型アクションは都市のプランを変えることができるのか?」ということで、まだわからない部分もあるんですけれど、伊藤さんの今の話と繋がる部分があると思っていて、トップダウン的に行う都市計画ではなくて、最近だと「タクティカル・アーバニズム」という言葉もよく聞きますが、階層を横断していくようなプランニングの可能性と言いますか、そういったテーマを設定した背景を、ご自身の活動と合わせてお聞かせください。

 

小泉:確かに、伊藤君のメディアプラクティスという言葉はあまり耳慣れないということもあって、僕のテーマとはあまり近い話ではないなと思っていたんですけれども、いまの解説を聞くと、似ている部分があると思いました。僕はオンデザインでまちづくりやワークショップを担当することが多いですが、あるプロジェクトの中で建築設計と市民参加を横断するときに工夫が必要だと実感しています。例えば行政の人たちと「まちの人達の意見を取り込みましょう」と市民ヒアリングをするのですが、、地元の人たちの声はたくさんもらえるのだけど、同じ会社の中でも設計だけをやってきたメンバーが、そういった市民の物語をどう設計に落としこんでいいのか分からないんですよね。そのための手法を考えていかないといけないし、市民の生の声というのは、要望や条件未満のことも多いので、一見すると建築のコンテストに見えない。だからそれを建築のコンテクストとして取り込もうとする訓練をしていないと取り込めないんだなと気が付きました。

 

 タクティカルアーバニズムやプレイスメイキングのような、DIY的要素を持ったまちづくりの手法が今注目されているのは、「作りながら考える」ということができるし、そういう方が使い手がカスタマイズすることができて、生き生きとした街につながると思うんですが、反面いつまでも設計が終わらなくてDIYでできる規模のものしか作れなくなってしまいますよね。一方で、巨大な都市開発ではそういった普通の市民の声のような非コンテクスト的なものはノイズと見られがちです。そうなると、開発のステークホルダーだけで成立してしまって、市民の手が作るところがなくなってしまう。水面下で計画を進めて、全部決まってからプレスリリースを世の中に出す。都市計画道路なども50年も前に決めた計画が、今の時代に合致するかはあまり検討されずに実行されてしまうこともあるようです。もはや、僕たちは都市ってそういうふうできているのではないかと思ってしまっている。本当は大きい計画だったとしても市民のレベルで作りながら考えられる時代であっても良いと思うのだけれど、それができていないのは何故なのかというところを考えていきたいと思っています。

 

 ちなみにタクティカル・アーバニズムには定義があって、「Short-term Action for Long-term Change」という言葉に集約されていて、大きな変化を見越して目の前の小さなアクションを行っていくことが戦術的都市変革に繋がるとされています。だけど日本でも海外でも事例が少なくて、日本だと道路を占有して人工芝を敷いてイベントを行いましたとか、海外だとパークレットみたいなものが多くなりがちです。それを長期的にやって、車線を減らしてウォーカブルな街をつくるという話はあったりするんですが、都市計画そのものをひっくり返すような事例というのはあまりなくて、じゃあ、タクティカル・アーバニズムみたいなものは無効なのか?いや、そうではないんじゃないかというのが僕の問です。

 

 今回僕が呼んでいるのは全然立場の違う人たちで、一人目は苅谷智大さんという方で、宮城県石巻市で復興まちづくりをやっていて、都市計画の研究者であり、「街づくりまんぼう」というTMOの現場で汗を流して活躍しています。二人目は西千葉という街の住宅地の中で空き地をハローガーデンという地域に開かれた広場として運営している西山芽衣さんという方です。この広場はマルシェをやったり、盆踊りをやったり菜園をつくったりと非常にいい場所として機能しています。一種の私設公園と言える、こういう場所が今後どういう風に成長していくのかというところに興味があるし、行政が設置する公共空間ではなく、民間がつくるパブリックな場所のほうがもしかしたら豊かに作り得るのではないかという期待もあり、今回お呼びしました。三人目は森ビルで新虎通りや虎ノ門ヒルズエリアのエリアマネジメントをやっている中裕樹さんという方で、巨大な開発の中で小さいスケールで、地域の人を巻き込むイベントを行ったり、スケートパークやグラフィティといった新しい刺激としてのストリートカルチャーを街に取り入れたりしながらマネジメントを行っているので、地域の人たちからのリスペクトもある人です。20年30年かけてやるような大きな開発をやるようなデベロッパーとしてのあり方を伺いたくてお呼びしました。今回は、そういったフィールドの異なる人を集めることで、市民アクションで街を変えられるのか?というところを考えてみたい。そういう意味で言うと、市民の声であったり、非建築コンテクストをプロジェクトの最後の最後まで入れれるのかっていうのはメディアプラクティスの話と近いかもしれないですね。

 

山田:総合設計制度みたいなものですか?

 

小泉:そうそう。そういう制度もいろいろあるんだけど、中さんは小さいスケールで、スケートパークとか、グラフィティとかストリートカルチャーとかに敬意を払いながらマネージメントを行っているので、地域の人たちからのリスペクトもある人で、20年30年かけてやるような大きな開発をやるような人たちが、足物と事をどう見るのかであったり、そういったスケールの異なる人を集めることで、街づくりというか市民アクションで本当に街を変えられるのか?というところを考えてみたい。そういう意味で言うと、ノイズをであったり、コンテクストを設計の最後の最後まで入れれるのかっていうのはメディアプラクティスの話と近いかもしれない。まあ、あきらめの悪い設計というか。

 

伊藤:メディアプラクティスも、まさにやりたいことは決定のタイミングの話でもありますね。

 

山田:では次の質問に行きたいと思うんですが、これまで3回連続でセッションに参加しているモチベーションであったり、その経験を踏まえて、これから参加する方へのメッセージをお話いただけたらと思います。

 

小泉:同世代で集まって議論するのは大切だと思っていて、飲み会だけじゃなくてちゃんと議論する場として設定されているのがパラレルセッションズの貴重なところですね。世代をある程度絞って、共通の問題意識とか、課題感を共有するのは大事で、さっきも伊藤君が言っていたけれど、時代が複雑になっているので、与件も複雑になってきているというような話は共感しています。オンデザインでもそうなんだけど、常にクライアントが持っている課題の方が現代的で、問が仕事という形になってやってくるようなことが多いんですよね。かといって、クライアント自身もその問の新しさをわかっていることは少なくて、やりながら考えていくということをしなくてはいけない。そういった現代的な問いに対して、同世代で議論していかないと、どんどん新しくなっていく課題に答える力がなくなってしまうと思っています。その共創のための仲間に出会えたらいいなと思って毎回参加しています。

 

山田:伊藤さんはいかがですか?毎回テーマが変わったりなどあるかと思いますが、その中での感触や手応えあれば。

 

伊藤:あんまり深く考えたことはなかったんですが、いろんな出会いがあって、もし参加していなかったらこんなに全国にいろんな繋がりができなかったし、議論も面白いし、その後の飲み会も重要な場ですし、いろんな人と出会うということはそれだけいろんな可能性が開けてきますし、実際にパラレル関係で知り合った人たちと仕事をする機会も増えてきてます。それがあるから良いかといわれれば、そうではないんですけれど、継続して合う仲間がいるということの価値は大きいと思いますし、共時的な共感とか違いとかを確認できる場所があるというのは良いことだなって思いますね。

 

山田:ではこれから参加する方々にメッセージといいますか、これまでの経験を踏まえて何かありますか?

 

小泉:ある問いに正解を出す場では無いと思うんだけれども、現代性のある難しい問いとか課題を議論する場としては非常に良いと思いますし、建築や都市の専門家に関わらず、いろいろな立場から加わってほしいなと思います。何かを発表する場でもないし、自分が思ったり考えたりしていることに対してディスカッションして、問題意識を共有できる仲間ができる場所なので、初めての人だったり、ちょっと自分は違うと思っている人こそ参加してほしいと思いますね。

 

山田:伊藤さんはいかがでしょうか?

 

伊藤:そうですね。あんまり難しいものだと思わずに、飲み会に参加するくらいのテンションで、だけど、ちょっと期待をするというか、例えば何かに出会えたりとかっていう、軽さと重さみたいなものをもって来てもらえると良いなと思っていますね。

 

山田:なるほどです。今日は長時間ありがとうございました。

 


 

伊藤孝仁
1987年東京生まれ。2010年 東京理科大学工学部建築学科卒業。2012年 横浜国立大学大学院YGSA修了。乾久美子建築設計事務所を経て2014年にトミトアーキテクチャを冨永美保と共同設立。現在、東京理科大学非常勤講師。主な仕事に、<CASACO><真鶴出版2号店>ほか。受賞・実績として2018年ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館 出展、SD Review 2017入選、第1回LOCAL REPUBLIC AWARD 優秀賞、第2回LOCAL REPUBLIC AWARD 最優秀賞など。

 

小泉瑛一
1985年群馬県生まれ愛知県育ち。2010年横浜国立大学卒業。2018年青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。2011年、宮城県石巻市で復興まちづくりの市民アクション「ISHINOMAKI 2.0」設立に参画、現場担当として様々なまちづくり活動に携わる。横浜の建築設計事務所オンデザインで拠点運営やエリアマネジメント、市民ワークショップなどを中心に担当。参加型デザインがテーマ。共著書に「まちづくりの仕事ガイドブック」(学芸出版社)。趣味は自転車。

 

山田織部
1989年沖縄生まれ。2013年琉球大学工学部環境建設工学科建築コース卒業。
卒業後7年間、複数のアトリエ建築設計事務所、構造設計事務所、大手ゼネコン等に勤務と同時に、個人の設計活動をスタートさせる。2019年‐ 単身渡独。
[主な仕事] 下高井戸の学生寮の改修(2014)、麹町のオフィス改修(2019)、ほか。
[受賞歴] コロキウム形態創生コンテスト2013 優秀賞受賞、ほか。

 

2019

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