フレーミング
未来を考えるきっかけはそもそもなくなってきたと言っていい。
アイディアの源泉は現在か歴史、先を予期しても気が付けば現在からの連続であり、現在と切り離して考えることは難しい。未来という大命題は「予測」を超えた推進力のある想像世界ではなくなっているかもしれない。
建築は美学、自然科学、工学、社会学など様々な要素を取り込みながら発展してきた。ただ一貫して建築自体の形式は説明可能性を保持し続けている。むしろ建築は「囲われた空間」という点からはじまり、「集まること」「快適でいること」などを通じて他分野へ働きかけるきっかけとなるデバイスなのではないかと思う。
ただ、茫漠と連続的に広がる未来に対して、限定的に捉えることで見える世界は鮮明化するし、建築という形式・骨格は常に意識的であることもまた肝要なのではないかと思い、二重の意味で「フレーミング」というキーワードを挙げた。
前田健太郎
前田健太郎建築設計事務所
専門分野|意匠
活動地|東京
生まれ|1981
現在取り組んでいるプロジェクトの一つに松原の住宅があります。
東京都世田谷区の高密住宅地に建つ予定の住宅ですが、住人が老若男女を対象にした音楽教室を開きながら住む住宅です。また、前面道路は2項道路で袋小路となっております。そのため自動車の往来は少なく、住宅内での活動が前面道路・路地にはみ出ながら、音楽教室として人を招き入れる建物です。そこで松原の家では家族間のコミュニケーション、近隣社会とのコミュニケーションを計画の根幹に置いています。これまで竣工してきたプロジェクトは、お施主さんの性格上、人を家に招くことに抵抗があることがほとんどでした。建築界が市民の社会性の重要性を発表している昨今ですが、閉じることを求められる住宅と開くことの可能性その両面を考えるきっかけになるプロジェクトになるのではないか、と期待しています。
Kentaro Maeda