切断と連続
震災で大きな被害を受けた土地。多くの人が土地を離れることを余儀なくされ、時間と空間の断絶し、元の形そのものに戻ることはないであろうとも思える茫漠とした土地。だが、土地の記憶や環境の価値に関しての手がかりが流失したように見える場所でも、空間の中に残された小さな手がかりを見つけ出し、何かを始める人びとがいる。また、その土地を離れたとはいえ、その土地の記憶や環境の価値について多くのことを知っている人たちがまだいる。それらの人たちは、その土地や環境の持つ記憶や価値をその目で発見し、その手で取り出していく術を持ち、新たな糸を撚り直していくためのきっかけを持っているようにも思える。目と手によって見出されたものや生み出された行いは、決してひとつの方向を向いているわけでもなく、評価の定まらない一見ばらばらなことでもあるが、今、集めておく必要があるのではないだろうか。
岩澤拓海
専門分野|意匠
活動地|東北/東京
生まれ|1983
私は震災によって甚大な被害を受けた土地で、多くの人達と協働しながら、いくつかの震災や土地の記憶についての「残し、伝えるための」プロジェクト(せんだい3.11メモリアル交流館、国連防災世界会議 東北防災・復興パビリオン等)に取り組んだ。
そうした中で、何を残すのか、何をつないでいくのかということについて考えるようになった。悲惨ともいえるようなイメージや科学的な事実、歴史化された出来事は多くの人が残す、あるいは伝えることとして思い描き・理解しやすいことである。
一方で、その土地や環境の持っていた記憶や価値はとてももろく失われやすい。空間の流失と時間の断絶によって、それまで当たり前の出来事であったり、当たり前の価値であったりしたものが、多くの人にとって、見えないものや忘れられたものになりつつあるように思う。
Kazuhiko Monden