「エネルギー見える化」の空間展開

次世代のエネルギーシステムをベースとした都市や建築において、エネルギーは系統より一意的に供給されるものではなく、地産地消の視点から利用者を巻き込んだローカルなものへと変化している。その一つとして「エネルギーの見える化」が挙げられる。東北大学において実施した「カタールサイエンスキャンパス」では再生可能エネルギーを体験学習できる場の創造、「ゼロエネルギートイレ」では給水圧を再利用したハーベストエネルギーによるトイレ照明への活用など、エネルギーを目に見える形で様々に空間に統合化し、建築・都市の新たな展開を模索してきた。これらのプロジェクトは、エネルギー・データ・プログラミングなど、領域を横断した検討を、空間に統合化したものである。「エネルギー見える化」の空間展開は、今後スマートシティを建築・都市設計に引き寄せるための、新たなイノベーションの端緒であり、横断的課題のひとつだと考える。

藤山真美子

東北大学大学院工学研究科
専門分野|意匠
活動地|宮城県
生まれ|1982

[現在のプロジェクト]

現在、意匠設計の立場から「エネルギーの見える化」に関するプロジェクトに参加している。目指すものは、再生可能エネルギーをベースとした「見える化」の空間への展開である。現状の「見える化」は、時間的変化を伴うエネルギー情報をデジタルサイネージ等により利用者へ発信する形で普及している。しかし、本来その目的は、利用者の省エネ行動やライフスタイル変革に訴えることであり、建築・都市における空間利用に深く関わるものである。明示化できない質を空間の創造によって扱ってきた建築・都市デザインの立場から、「見える化」を空間にインテグレートすることは、時間軸を取り込んだレジリエントな建築・都市の創成につながると考えている。参加したプロジェクトの一つである「AC/DCハイブリッドシステム」の構築では、震災時のエネルギーと利用者の関係に学び、既存建物への新エネルギーシステム導入と利用者をつなぐ新たな室機能の提案を行った。

2016 デジタル化環境職能の拡大
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