主観的越境
地域活性化の手法として一般化している特産品のパッケージのリデザインなどはあくまで表層的なデザインであり外向けに価値を改めて訴求するものであり、そこで生活をする人の風景は変わらない。むしろ、一見関係ないようなものづくりの要素を取り入れることで毎日の風景をみんなでつくりあげていく場が必要である。”つくる”で表現される空間をつなげることで生活を作り上げることを目指している。
平本知樹
wip inc.
専門分野|エクスデザイン
活動地|東京
生まれ|1986歳
Fresh Lab. Takayama(フレッシュラボ高山)は、岐阜県高山市で80年以上にわたり地域の食文化を支えてきた「駿河屋魚一」が運営するスーパーマーケットの一角にオープンした、”より豊かな食卓と一歩先のくらしをみんなでつくる場”をコンセプトに掲げるラボである。2016年5月に誕生したこのラボに企画・設計・人材教育・運営まで全体を通してコミットした。
空間全体を貫くテーブルは特徴的なカーブを描き、各機能を緩やかにつないでいる。入り口側の受付は新鮮な野菜やフルーツを使ったフレッシュジュースを販売する”カフェ”を兼ね、ラボの導入部として利用できる。中央には3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作機器が揃い、カトラリーや家具や雑貨などをつくれる”工房”があり、一番奥にはスーパーマーケットで購入したばかりの新鮮な食材を使って料理できる豊富な調理器具が揃った”キッチン”がある。
空間デザインに関して大切にしたのは、通常はばらばらに存在する生活構成要素である”キッチン・工房・カフェ”がつながったものとして体験できることである。
デザインのキーポイントは、大きく分けて2つ。
ひとつは、100m2という限られた空間の中で”キッチン・工房・カフェ”に”トークイベント”を加えた全機能を組合せて開催できるようにテーブルのかたちをデザインし、中央部のテーブルを可動式とすることで最大40名の着席空間を確保できる。もうひとつは、一面にタイルが貼られた白い大きな壁。「清潔感」「実験・実践」という全てのエリアの共通項を表現するために100㎜角タイルを採用した。タイル目地を崩さずに、機能に合わせて様々な大きさの開き戸を設置するだけでなく、キッチンやモニターも同様に配置した。