幸福論
建築が人々に与えることができるものと、その未来について考えてみた。建築における役割を突き詰めると、それは人々に幸福を与えることではないだろうか。しかし、あらゆるものが多様化、共有化している現代では、一元的な幸福や、特定の個人に対してだけしか幸福を与えられない建築は、その役割が不十分ではないだろうか。一から建物を計画するのではなく、慣れ親しんだ記憶を媒体に、少しずつ更新するように組み立てる手法は、一見当たり前に思えるかもしれない。しかし、あらゆるものを許容しながら設計することで、周囲の環境だけでなく、過去や利用者、あらゆるものとの調和をはかり、一元的でも、特定の個人だけでもない、あらゆるものに対して、それぞれに小さな幸福を与えることのできる建築が作り出せるのではないかと考えた。小さな幸福を周囲や個人など、問わず与えることのできる建築は、新しい幸福の未来を描くことができるのではないかと期待している。
嘉村威助
株式会社平成建設
専門分野|意匠
活動地|静岡
生まれ|1988
『広場の縁(ふち)』
静岡県の市街地に建つ、オフィスの建て替え計画。
要望は、既存建物のプログラム、動線、空間のプロポーションをできる限り残すことと、各支店の社員が打合せや会議などで訪れるため、社員同士が自然にコミュニケーション取れるような開放的な空間が求められた。
そこで、敷地の形に合わせるように幅50m、奥行き5~12mの細長いワンルームをつくり、ブログラム同士が重なることで生み出された無数の『縁』を、柱、窓、壁、床、天井といった身体的な要素を使って、慣れ親しんだ既存建物での空間や使い方の記憶をなぞる様に設計していく。それらを紡ぎ全体像を作り出すことによって、利用者にとって懐かしくも新しい、自然と交流が生まれる『広場』のような建築を提案した。
一から建物を計画するのではなく、少しずつ更新するように組み立てることで、周囲の環境だけでなく、過去や利用者、あらゆるものとの調和をはかり、未来につなぐことができるのではないかと考えている。