多声的な再構成
様々なもの・ことが充分にとり揃い、個人や団体がそれらを自由に選択することが可能になった時代を迎えている。煩雑に散らばった膨大な量のもの・ことを単純化して整理をすることなく、それらが別々に紡ぎ出している関係性を、目的を超えて開かれた系として「多声的」に再構成することが建築にもまちづくりにも求められていると感じる。建築を考えることから、様々な社会活動や世界に広がりのあるクリティカルなパラダイムを発見したいと考えている。
市川竜吾
建築築事務所 / 首都大学東京
専門分野|意匠 / 都市
活動地|東京 / 長野
生まれ|1980
【2016】「千曲のコモンハウス」は私の長野の実家を改修するプロジェクト。母が一人で住まい200坪の敷地を持て余していた。中世農家型=中庭形式の建物配置と塀が無い隣家との自由な通り抜け、同居を決めた弟夫婦の子育てと商店経営、地域に残る物々交換や互助の慣習、新しい住民の流入と耕作放棄された周辺農地、実家の建物とその配置の建築的解釈など…これらバラバラに存在する「もの・こと」を、街と家の資源と捉え直し「持て余した実家」を、開かれた系として再構成したい。地域社会の中で「家族」という枠組みを越えた、他律的な「家」を定義しようと考えている。大学をベースに企画するまちづくりのプログラムや、千曲市の空き家対策まちづくり事業と連携して、プロジェクトと設計を進めている。
【2019】設計者として、市井の人の営みによる「技術」のフィールドワークから、まちづくりワークショップの立案と運営、「多声的な場」となる地域施設の研究と計画、地域資源を活用した広場の設計などを、都市計画・防災・植生生態学・まちづくりなどの専門家と協働し進めている。また大学において、都市計画とまちづくりの専門家と共に都市・まちづくり・建築に関する、実習を含む実践型の講座を受け持ち、教育の枠組みの中で学生や地域との共同作業を通して、研究に連関する可能性志向型のフィールドワークとワークショップの実践を行っている。モノや空間と人の営みがつくり出す「動的な秩序」を捉え直し、これからの地域性に対応した都市空間の計画とまちづくり、地域環境への射程を広げた建築設計、新しい伝統と文化を定義するデザインについて、実践と研究を進めている。
参加セッション:セッション33「ボランティアマインドは公共空間をどのように変えるか?」
photo by Daichi Ano (house-Mのみ)