育てられる建築

建築はその巨大さ故に漠然と自身の周囲に広がっている環境の一部となり、良くも悪くも意識下の存在になりがちだが、人に手を掛けてもらわないと“用”を更新できず時代の流れに取り残されてしまうし、“強・美”を維持できず朽ちてしまう。つまり、愛着を持たれて育てられるものでないと、建築はその思想を歌い続けることもできないし、過ぎ行く時間への耐久性と小さな欠陥に対しての抵抗力も持ち得ない。そこで私たちは3つの理念−「物質から建築へと構築するプロセスの間に物体という構成を挟み“スケールを解体”して捉え易くする」「人的事象のきっかけとなり、光や風などの自然現象が知覚できる場所=“小さな環境”をまとわせる」「開閉や交換などの可動性、触りたくなる素材感を持たせるなど“身体的欲求による接触”を促す」−をもとに設計を行う。これらによって建築と人との距離が近くなり『育てられる建築』が生まれるのではないかと考えている。

PERSIMMON HILLS architects

柿木佑介

PERSIMMON HILLS architects
専門分野|意匠
活動地|東京・大阪
生まれ|1986

[現在のプロジェクト]

富士吉田市にあるオフィスビルをホステルへとコンバージョンする計画。
既存建築はボックス状のソリッドな佇まいで、建築のスケールがダイレクトに街並みに対峙していた。事業計画上、短工期・低コストが求められ、この界隈出身である施主の地元の知人達がある程度の材料を融通して施工してくれる、といった状況であった。その中で集まってくる材料を適材適所ハコモノ建築の内外に組み合わせ、光や影、風や起伏を伴った人が寄り添えるヒューマンスケールな場所をまとわせていき、建築のスケールを解体しながら街並みとの関係をつないでいこうと考えている。
地方都市は人口減少に伴い空き家が増えている反面、土地や建築の取得費が安くなり、利益優先ではないその地域ならではの面白い事業が展開し易く、それが観光資源になるとも言える。そういった状況下においては、消費される建築はいよいよ価値を失い、地域の人達に手を掛けてもらい、更新され、育てられる建築こそが、これからの街の風景を牽引していくのではないだろうか。

2016 参加更新環境

PERSIMMON HILLS architects

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