身近なスケールから考える

公共建築や都市など大きなスケールのものを身近なスケールの集合として捉えることに可能性を感じている。そう考える理由は住宅や店舗の内装など小さなスケールかつ親密な空間の建築に関わることが多く、そこで備わったスケール感覚によるものである。例えば、築50年ほどの小さなビルをリノベーションした「泰生ポーチ」は、ほぼ毎週ビルのどこかでイベントが開催されている。このような小さなビルのリノベーションでも街に与えるインパクトは大きく、毎週まちづくりの実践を目の当たりにしている。都市をより高密度に捉える一つの要因となっている。どのようなスケールの建築でも公共空間との接点は存在する。また同時に極めて私的な空間も内包している。私たちは常にイームズ夫妻が作成した映像「powers of ten」のように様々なスケールを行き来している。その際に「身近なスケールから考える」ことで都市という概念がより身近に開かれたものになると考えている。

稲山貴則

稲山貴則建築設計事務所、東京理科大学工学部建築学科栢木研究室
専門分野|意匠
活動地|横浜市中区、東京都葛飾区
生まれ|1982

[現在のプロジェクト]

私は現在、横浜市中区で建築設計事務所を主宰している。現在の仕事の中心は出身地の山梨で住宅や別荘の計画、他の地域で店舗の設計などをしている。現在、施行中のプロジェクト「Tab House」は東京から山梨県北杜市へ移住する若い家族のための住宅である。建築のファサードに少し誇張した半外部空間(大きな縁側や長いテラスなど)を取り付けた。クライアントは竣工後、30年以上その住宅に暮らし地域とコミュニケーションをとることになる。長く暮らしていく間に、建築や敷地の中だけでなく地域の人々との交流や、大きな庭や街路、近くの公園や小川など少しずつ自分の領域を広げて行く、そんなきっかけになるよう半屋外空間を設えた。建築の周辺環境を住宅と同様のスケールの集合と捉え直すことで、住宅で起こるアクティビティ(食事や会話など)を地域に広げ多くの自分の居場所を地域の中で獲得できると考えている。

2016 場づくり更新空間性
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