演出する舞台
現代の建築とは、1人1人のドラマを演出する舞台であると考えている。IT技術の進展により社会・家族・個々人のつながりは大きく様相を変え、人々は欲しい情報から欲しくない情報まで、様々な情報を得ることができる時代となった。情報入手が困難であった時代から比べると、非日常的なイベントや事件でさえ日常に溢れかえり、我々人間の感覚は麻痺し、喜びを喜びと感じることができない、表情を持たない顔なしが横行する世の中になっているように思える。時代は今、日常の中に非日常的な未来の片鱗を探しているのではないだろうか。手法は何でも良い。レオナルド・ダ・ヴィンチが絵画・音楽・植物学・数学・建築と様々な分野を横断し、「自然を師とする」を命題に掲げ知的欲求の探求・未来を想像したように、個々人のドラマを演出する舞台として分野を超えた未来の片鱗を垣間見せることこそが、「建築」という行為になりえるのではと考えている。
松澤広樹
株式会社竹中工務店
専門分野|意匠
活動地|東京
生まれ|1988
学生の頃から、「非日常的」であることに興味がある。
モノを1つ置くだけでその周りに場が発生するように、何もない砂浜がレストランに、何もない草原がイベント会場にと、その時は「仮設的」というキーワードをもとに非日常を「演出する舞台」をつくってきた。非日常空間を体験した時の人々の驚く顔や笑顔を見て、場をつくることへの面白さを覚えた。
私は現在、ホテル計画グループに所属しており、建築主とともにオリンピックやその先の日本の未来を見据えたホテルとなるよう議論を重ねている。
もちろん、非日常的であるとは何かを念頭に。そして、非日常空間を体験した時の人々の驚く顔や笑顔を見るために。