建築大家
大家は普段は黒子的で見えないが、都市に対して強い決定権を持つ存在である。どのような目的で、誰に、いくらで貸すかの設定が生み出す創造性は計り知れない。建築家自らが資金を出し、不動産を取得し、設計し、大家となることを「建築大家」と名付けた。建築大家は保守・管理・経年変化など長期間に渡って、主体的に建築と関わることを軸に設計することになる。そこでは見栄えの良さと、保守管理のしやすさというものが主体的に判断されるようになる。また、設計した建築を借りてもらう形で家賃=設計料をもらうという様に、設計料の考え方が変わる。設計・管理の労力に見合えば、家賃が安くとも成り立つため、社会的に面白いと思える事業を後押しできる。敷地周辺の住宅を購入することで、その間にある都市空間も設計対象となり、設計効果が広範囲に及ぶ。建築のプログラム自体から設計することで、慣習的な価値観をともなわないビルディングタイプも実現できるようになるだろう。
廣岡周平
PERSIMMON HILLS architects
専門分野|意匠
活動地|関東・大阪
生まれ|1985
川崎で中古住宅を購入し、設計し、セルフビルド中である。建築設計という短期的な建築との関わりではなく、建築家自ら所有することで、「既存環境の特徴を引き伸ばす設計」と「運用」まで含めたビジネスモデルを目指している。敷地は旗竿地、再建築不可、築60年以上、85㎡、2F建、500万という物件である。この住宅の特徴は度重なる改修で窓が追加されたことによる開口量であり、木造とは思えないほどである。この特徴を引き伸ばすため、私たちは光を通す耐力壁をプラン上の中心に集め、窓を回廊状につないだ。ワンルームだが「部屋」を感じるプランとなり、設計事務所と生活空間と外部空間が入り混じった環境となる。
借家時の家賃10万を貯金することで6年住むと住宅取得費・改修費の元が取れ、その後月8万で3年貸すことで同規模の住宅の設計料とほぼ同額が回収できる。6年後、同様の物件を取得、改修し、住み替えながらプロジェクトを生んでいく。