木密耐震改修
未来の大災害への備えが喫緊の課題となっている東京の木造密集地域では、東京都が「木密地域不燃化10年プロジェクト」を進めている。これは、大まかに言えば区画整理による道路の拡幅と防火帯建築の新設によって延焼を防ぐ計画だが、これにより場所の記憶と歴史・人々の生活や文化が損なわれる。街区規模の拡大に頼らない、災害に強い木密地域の耐震化・不燃化の提案が必要である。同時に、深刻化する都市の空き家問題、世帯人口の減少による家庭内介護/福祉の担い手不足や独居老人の孤独死など、木密地域が抱える問題は多い。新たな耐震改修方法の構築によって、これらをまるごと解決できるような提案を考えている。木密地域の住環境の改善によって東京の魅力を増せば、より多くの人を惹きつけ、さらなる人口の集約と新しい文化の発祥にも繋がる。30年後には、自動運転で居室化した自動車の誕生によって、移動は生活の一部になる。東京の生活と文化、地方の自然と文化の共存のために、東京のさらなる高密化の可能性を考える。
秋山照夫
秋山照夫建築設計事務所
専門分野|意匠
活動地|神奈川県川崎市
生まれ|1985
場所は北区赤羽の木造密集地域、小さな神社のとなりに位置する古くから住む木造2階建て(母屋)とその横の木賃アパートの耐震改修プロジェクト。築60年、延床面積90㎡の小さな古い木賃アパートは、時代の変化に併せて、風呂トイレ無しの5世帯アパートから1階1世帯2階2世帯のアパートへ、そしてこれから、長男家族の住宅として変貌を遂げる。長男は結婚して家族が増え、親家族が住みにくくなった母屋の2階と、このアパートを住居とすることになった。神社や、道路に囲まれた敷地は木密地域らしからぬ開放感をもつ。木賃アパートの1階を土間スペースとして開け放ち、彼らの庭を拡大する。元々あった広めの駐車場と拡大された庭は、彼らの趣味や子供の遊び場として、地域のシェアスペースとして、長男が始める会社のオフィスとして、時代や家族、ライフスタイルの変化と共にもう一度新しくなる。地域に根付いた、半分開かれた空間を生む木密耐震改修プロジェクトである。