リノベーション家具
私はファストファニチャーの普及に違和感を感じている。なぜなら、多くのファストファニチャーはベニヤ、ランバー、フラッシュ等の使用により、表層上の高級感のみになり材としての価値は低い。また、耐久性も少なく家具の新陳代謝を急激に早めているものが多いからだ。一方で、古くからある家具の多くは無垢材や現在では取り寄せ不可能な木材を用いるなど、材としての価値が高いものが多くある。だが、材料としては寿命を迎えていないにもかかわらず、 デザイン的に現代の空間に合わせるのが難しいなどの理由から、使われていないままのものが多い。 このような家具を建築と同じように リノベーションするということは、資源の有効活用になるとともに、どこか懐かしい感じがする長く愛される家具を様々な空間の1つの大切なパーツとして提案していくことができると考えている。
杉山聖昇
mascot
専門分野|意匠
活動地|長野県長野市
生まれ|1987
私は現在mascotという家具デザイン・製作の会社を主宰している。今取り組んでいるのは、「リノベーション家具」だ。リノベーション家具とは、使われなくなった古い家具に手を加えもう一度新たな家具としての価値を生み出したものである。私の住む長野県長野市には、使われなくなり倉庫で眠っている家具が多く存在し、この家具をもう一度使用できるようにしたいと強く感じた。そのような思いから作品を製作し、展示販売を行った。作品の一例としては、脚が曲線で構成されて、現代の空間に合わせるのは少し難しそうな机がある。私はこの机の脚の曲線を生かしたいと思い、曲線を強調しなおかつ機能的にも床が傷つかないようにラバー塗装を施した。また他の部分の塗装を剥がすことで、メリハリをつけ無骨で装飾的な印象から少しユーモアがありリラックスした家具に変化させた。このように、多くの使われなくなった家具に少しの変化をもたらすことで現代でも十分使用することが可能であると私は考えている。
杉山聖昇