情報の錯覚

人間は、様々な要素から空間を知覚する。その中でも視覚が最も情報量としては多くを担っている。それは僕たちが明るさや色、奥行き感を視覚として認識しているからであり、これは人間が進化の過程で生き残るために必要とした能力である。 一方でその場所や空間がどうなっているのかというのを知るためには、経験や知識の補足が必ず入ってくる。そこを特異な場所にするには、そういった今までの経験や知識には無かった情報を刺激しなくてはいけない。しかし情報化社会における、見た事が無い視覚的な情報というのはいたって少ない。だからこそ、新しい空間を知覚する情報そのものを現象学的に錯覚させることで、おこり得る場所の特異性は設計できるはずである。

畠山鉄生


専門分野|意匠
活動地|東京・富山
生まれ|1986

[現在のプロジェクト]

高野山のふもとに、天野という小さな里がある。
施主であるパン職人からの依頼は、里の中心にパンを売る場所がほしいということであった。
敷地は都市部とこの地域をつなぐ道路とすぐそばにある田んぼ道とに挟まれた場所にあり2つの全く異なる雰囲気がそこにはある。
そこで各々の道の雰囲気に馴染むように、田んぼの風景が映り込む壁と道路の舗装に合わせたアスファルトシングルの壁を建て、その境界を強調することで見えない境界線が顕在するように錯覚させるよう設計した。
片方の壁は外から見ると道路と素材とを統一させ、内から見ると道路を分かち、もう片方は外から見ると風景を抽象的に映し込み、内から見ると風景への入り口になる。

2016 ローカリティ景観空間性
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