インテグレートされた建築環境

2006年にアル・ゴアが出演した「不都合な真実」が公開されてから10年。「環境」という言葉は、社会で共有された価値として十分に認識されるようになった。一方で「建築環境」という言葉はどうかというと、まだまだ価値の定義を模索している段階のように思われ、ともすると建築意匠に制約を与えかねない存在と捉えられることもしばしばある。しかしながら本来、建築環境はあらゆるプログラムの建築において、そこに存在する人の行動を規定する根源的な要素であり、建築の社会的な価値を決定する重要な要素の1つであるはずだ。では、なぜ建築環境の価値が十分に評価されないのか。それは建築環境が温熱環境、風環境、光環境、音環境…と細分化されすぎてしまっていることに加え、それらを統合したイメージを示せていないからではないだろうか。対処療法的な改善ではなく、「インテグレートされた建築環境」を実現すること。それが、スポイルされた建築の社会的な価値を再構築する大きな一手となると考えている。

谷口景一朗

東京大学大学院特任助教
専門分野|意匠/環境
活動地|東京都文京区ほか
生まれ|1984

[現在のプロジェクト]

2009年4月~2016年3月日建設計を経て、2016年4月より現職。日建設計では、主にオフィスビルの設計を担当。「ラゾーナ川崎東芝ビル」では、周辺建物を考慮した日射遮蔽・空調排熱のコントロール・室内からのビューの確保といった複数のパラメータをシミュレートした上で1つのデザインコードに統合するといったプロセスで外装デザインを行った。現職では、より設計の初期フェーズから複数の環境シミュレーションを並行して行うことで、意匠設計との検討の双方向性の確保を可能とする設計プロセスの提唱を目指し、シミュレーション環境の整備等に関わる研究を行っている。


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サスティナビリティシミュレーションデジタル化環境
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