’’出会いのきっかけ’’づくり
今回のイベントへの応募に当たりこれまでの設計活動を顧みて私が常に念頭に置いていたことは人と人、人とモノ・コトの’’出会いのきっかけ’’づくりなのではないかと感じた。SNS等の仮想の世界での繋がりを作るツールは現在の世の中にあふれているが、実際の体験をできる場所を作ることができるのが建築だと思っている。施設によって使う人は異なり、何を感じ、何に興味を惹かれるかは人それぞれである。ただ、それを起こすためのきっかけとして、そこに行きたい、行ってみようと思うようなきっかけを空間が演出できると信じている。それは、目に何かが見える、何かが聞こえるといった単純な行為の積み重ねを築いていくことなのかもしれない。装飾的な演出ももちろん重要だが、そういった人の行動を誘発できる空間づくりを常に行い続けることが、社会全体の繋がりを作る一つのきっかけになると考えている。
岡本賢吾
株式会社久米設計
専門分野|意匠
活動地|東京都江東区
生まれ|1982
私は久米設計という組織設計事務所に属し、不特定多数の人が利用する公共建築及び商業建築に携わってきた。ある程度の規模を超える建築では、施主と実際の利用者が異なる場合が多く、我々は利用者の顔を創造しながら進めることが多い。「池袋東口プロジェクト」では、商業施設の運営経験のないオーナーや商業コンサルとともに、商業施設とはどうあるべきかというところからプロジェクトを開始した。ものを売ること自体よりも人と人、人とモノ・コトの出会いを作ることがこの施設のあるべき姿との結論となった。我々設計者の使命は、その出会いのきっかけを作ることのできる場所を計画することであった。中央の広場からは建物内を一望でき、各階には目的のないで人も滞留し、イベント等に参加できるスペースを分散配置した。オーナーにご理解ご尽力いただき、竣工から2年経った今でも多くの人で賑わっている。
広場や共用スペースを分散配置した商業施設