ボーダレス
情報化社会は世界を縮小し、世界に物理的なボーダーは無くなりつつある。今までに培った建築家としての職能を活かしたいと2年ほど前アフリカに渡った。そこには建築家としての職能では対応できない事象があまりにも多く存在した。建築が無いことで多くの人が簡単に亡くなっている状況下では、いわゆる設計の議論よりも、建築をいかに生み出すかに重点が置かれていた。ここでは、社会問題の真因の追及、建築を生み出すための企画、設計、監理、施工までが建築家に求められる。それは、先進国で言われる過去の建築家の職能を超えている。我々は、これを「職能のボーダレス」だと感じる。世界は今「職能のボーダレス」を必要としている。
神谷勇机
石川翔一
1-1 Architects 一級建築士事務所
専門分野|意匠
活動地|愛知県刈谷市
生まれ|1986
我々1-1 Architectsは、2014年からアフリカのジンバブエに孤児のために食事を提供する施設(HC3)を計画してきた。2年間アフリカのジンバブエで暮らし、そこに存在する問題の真因を追求してきた。ジンバブエの孤児は、国の法規か寝る場所はあるが、食事を与えられないことが多い。「食事を提供する施設が生活圏内に存在しない」これは、ジンバブエの特徴的な問題点の1つであった。この建築はひとつのプロトタイプに過ぎないが、ジンバブエ人の施主とともに現地にノウハウを残し、 彼らの手で施設が複数建設されて意味を持ち始める。現在は設計を終え、現地カウンシルの承認待ちである。
アフリカで暮らしてみると先進国から途上国を援助するかのようなプログラムの多くが現地を置き去りにした机上のものであることに気づく。我々は、現地に暮らすことで見えてくる本質的で土着的な問題に興味がある。
30年後、世界は、よりボーダレスになる。それは、移動や通信だけではない。「建築家」の職能も過去の垣根を越えるだろう 。我々はこのプロジェクトを通して、新たな建築家像を示したいと考えている。
1-1 Architects