ティンバーローテーション
地球環境を俯瞰しながら、各国の建築状況を見ると、20世紀の都市を形づくってきた建築とは異質なものが生まれているように思う。そのひとつが、新しい木質建築であり、日本でもCLTやW-ALC、LVLといった厚板の木質材料に注目が集まる。海外では、明らかに常軌を逸した木質建築が次々と発表され、環境負荷低減を目的とした都市の木質化が急速に広がっている。
木材が他の材料と少々異なる点は、森から都市へ、また別の都市へと、ダイナミックに形状を変えながら、社会を循環していくことであると考えている。古くから、移築や再利用といった文化が見られ、木材の循環(ティンバーローテーション)は、技術や伝統の継承にも生かされてきた。人口問題や環境問題、エネルギー問題から、都市は柔軟な変化を要する時代を迎えたと言え、木材という循環材料を活かした新しい建築が求められている。
青島啓太
芝浦工業大学
専門分野|意匠 / 教育
活動地|東京
生まれ|1982
特に、近年では重量木造であるCLTやW-ALC等の木質材料による空間の可能性を示唆しながら、地球環境の持続を担う建築のあり方について研究やプロジェクトを進めている。
建築研究所の敷地内に建設した「つくばCLT実験棟」(2016.04)をはじめとして、CLTパネル工法による建築の設計を手掛けている。また、大学での研究教育の一環として、ゼロエネルギーハウスの実証実験棟として、エネマネハウス2014「母の家2030」エネマネハウス2015「継ぎの住処」を発表し、環境配慮型の建築設計にも取り組んでいる。
日本で大学を卒業して以来、アフリカ・エチオピア、フランス・パリ、トルコ・イスタンブールと3地域3か国での教育・研究・設計の活動を行ってきた。宗教的・民族的なダイバーシティーに身を置くことで、近代化による均質な社会からの転換により、求められる都市・建築が大きく変化していることを実感している。
IMG01つくばCLT実験棟(撮影ナカサアンドパートナーズ),IMG02エネマネハウス2015継ぎの住処,IMG03エネマネハウス2014母の家2030