建築に、未来の価値は期待できるのでしょうか。分野や組織の垣根を越え、学術、技術、 芸術を統合する日本建築学会だからこそ可能な、コレクティブで建築的な実践とはいかなるものなのでしょうか。本企画は、学会というプラットフォームの価値を最大限に駆使して、建築に関わる人材を一同に集め、分野や世代、価値観が並走する複数のセッションを通して、建築の現在的な意義を共有し、発信するための運動体です。
情報技術の発達の下支えによって、社会は流動化しているといわれて久しく、人や、情報、モノが、国境を軽々と越えてネットワークされながら流動する時代に私達は生きています。それは同時に、「動かない」ことの相対的な価値を同様に見出す契機でもあります。例えば福祉を考えた時、増え続ける高齢者も、減り続ける子供も、インターネットを携えて都市を放浪する若者と比較すれば、相対的に動かない存在といえます。また、観光立国を掲げる政府は2020年までに年間4000万人の海外からの観光客の動員を目指し、同時に、地方創世を掲げてIターン、Uターンなどの定住を促進しています。また、「動かしにくい」巨大な土木インフラやタワーマンションは将来にむけたその維持管理が社会問題となり、ストック活用によって既存の建築を少しずつ改変するリノベーションが一般的な認識として定着しつつあります。
土地に定着することが建築物だと定義される建築が、動く、動かないの視点から、どのように再解釈することができるか、またその新たな認識が、これからの社会においてどのようなプロジェクトを可能にするか、広く問うための機会です。動くこと、動かないことをパースペクティブとして都市や建築を捉えた時、今建築を取り巻く社会状況と、建築にできることが、露わになるのではないでしょうか。
2017/10/22(日)10:00 - 19:00
10:00~15:00:グループセッション
15:00~19:00:ゲストを交えての公開セッション
松川昌平|慶應義塾大学SFC 環境情報学部准教授。000studio主宰。
菅沼 聖|山口情報芸術センターYCAMエデュケーター。
馬場貞幸|弁護士。黄櫨綜合法律事務所所属。一般社団法人ライツアンドクリエイション理事。
建築会館ホール(東京都港区芝 5-26-20)
日本建築学会
担当委員
辻 琢磨|403architecture [dajiba] 共同主宰
川勝真一|RAD共同主宰
エントリーに際して、以下の3つのカテゴリーから関心のあるものを一つ選択してください。
当日は3つのカテゴリーをさらに3つのグループに分けてセッションをおこないます。
海外からの観光客は昨年2400万人を突破し、日本人の国内旅行も年々増加を続けています。現在、人が動くことの最も強い動機が「観光」ではないでしょうか。既存の観光地だけでなく、地方の小都市や集落まで、あらゆる場所が観光の対象となり、またなろうとしています。これまで当たり前とされてきた地域資源が、観光資源として再発見され、本来はそこにしかないものである場所がSNSなどを通じて即座に情報として拡散し共有されます。一方で、観光客の急激な増加は、その場所を日常とする人々との軋轢も生みつつあります。この大量に移動し続ける人々と、移動できないことの価値が最大化される状況を、建築や都市はどのように乗りこなしていけるのでしょうか。
東北の大震災、そして続く原発事故では、動くことができる人、動きたくてもできない人、動きたくない人など、動くことを巡る格差の存在が浮かび上がりました。軽やかに移住やノマド的な生き方を選択できる人々だけでなく、動きにくい、もしくは動けない人々を包摂した社会をどのようにつくっていけるのでしょうか。そこには、子どもや高齢者のための施設をどのように地域に開いていくかの議論や、災害のリスクに対して多様な主体を巻き込んだ地域マネジメントの仕組みの構築、移動技術の発展によって過疎地域などの移動性が向上するなど、多様な動く、動けない状況にある主体がともに、よりよく生きるための建築や公共空間について考えていきたい。
自然環境から情報環境まで、私たちは様々な環境の中で日々暮らしています。地球温暖化やエネルギーの観点からも、生態系と循環的なものの移動を可能にするような建築生産や都市像が求められ、風、熱、光、空気などをどのように利用するかが重要なトピックとなっています。一方で、日々大量に生み出される人々の行動に関する情報はビッグデータとして注目され、その活用方法が模索されています。また、情報も都市の中を大量に移動しています。この情報が物理的な都市空間へと実装される時、人は、そしてものの移動はどのように変化するのでしょうか。
※お問い合わせは上記メールアドレスまでご連絡ください。
日本建築学会事務局とは別窓口となります。
会員相互の協力によって、建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達をはかることを目的とする学術団体です。1886年(明治19年)に創立されて以来今日にいたるまで、わが国建築界においてつねに主導的な役割をはたしてきました。現在、会員は3万5千名余にのぼり、会員の所属は研究教育機関、総合建設業、設計事務所をはじめ、官公庁、公社公団、建築材料・機器メーカー、コンサルタント、学生など多岐にわたります。
講演・展示事業等を通じて建築界および一般社会の建築文化の向上に寄与することを目的に、学会内に設置されている委員会の一つです。主な活動である建築文化週間(毎年10月に開催)の一環として、このたびパラレル・セッションズを開催することとなりました。その他、日本建築学会賞(作品)受賞者記念講演会、学生サマーセミナー、アーキニアリング・デザイン展を開催しています。
川合智明|事業理事・竹中工務店執行役員設計本部長
大森晃彦|建築メディア研究所代表
田中元子|モサキ代表
松田 達|武蔵野大学専任講師/松田達建築設計事務所主宰
井上宗則|東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻助教
井内雅子|大成建設設計本部建築設計第5部設計室長
鵜飼哲矢|九州大学大学院准教授
加藤詞史|加藤建築設計事務所主宰
川勝真一|RAD共同主宰
斎藤公男|日本大学名誉教授
佐藤 淳|東京大学准教授/佐藤淳構造設計事務所主宰
関野宏行|佐藤総合計画取締役常務執行役員
辻 琢磨|403architecture [dajiba]共同主宰
濱野裕司|竹中工務店東京本店設計部設計ISD部長
平野利樹|東京大学隈研究室博士課程
山村 健|早稲田大学講師