セッション31 – 設計業(者)の多角的な活動による新しい組織のかたちとは? –

2019 マネジメント職能の拡大自発性

 

組織のかたちについて興味がある。現代では社会状況の変化により、設計者(業)が建物を設計・監理するという既存の枠組みをはみだしながら、様々な立場や、視点によって多角的な活動を行っている。仕事の仕方や環境が変化していけば、その組織の有様も同時に変化していくはずだ。チームの編成や、意思決定、デザインの対象など、様々なことが柔軟なかたちをした組織像というものがあるのではないだろうか。組織とは「斯くあるべし」ということではなく、それぞれの多様な活動を重ね合わせ、組織の在り方に対してどのようなフィードバックの可能性を見出せるか、このセッションを通して新しい組織のかたちについて考えていきたい。

セッションリーダー:森元気|森元気建築設計事務所主宰
登壇者:水野太史|水野太史建築設計事務所・水野製陶園ラボ、浜田晶則|AHA 浜田晶則建築設計事務所、津賀洋輔|津賀洋輔建築事務所、飯田智彦|東京大学、塩脇 祥|4kado design studio (ヨツカドデザインスタジオ)、岡山俊介|金箱構造設計事務所、香月真大|SIA一級建築士事務所、針貝傑史|ibda design、藤田雄介|Camp Design inc.、住友恵理|ERI SUMITOMO ARCHITECTS

セッションリーダーへのインタビュー記事はこちら


 

【応答文1】
自己のロールモデルから社会へ
(住友恵理)

パラレルセッション2019に参加させていただき、同世代の様々に建築に携わるメンバーと議論を重ねた。6セッションに分かれての6時間超に及ぶ議論は終わってみればあっという間で、結論から言うと私達のセッションは結論には至らなかった。

セッションテーマ「設計業(者)の多角的な活動による新しい組織のかたちとは?」はそのテーマと参加者の多様性故に、暫定的な結論は個々をロールモデルに当てはめるしかないという至極当たり前の収束点に戻ってくるという結果になった。その結果そのものは有意義でありモデルの探求はとても参考になるので、設計者(独立している者)のマインドセットとして無くてはならないものだと思う。個々の結論を聞いてみたい。

ただ、創作は個人の発想から始まるが、建築というツール自体が社会性を持つ以上、個人の興味に加えて他の意義がないと仕事として成り立たない部分も多い。建築の規模を問わず、まずは他者性や社会の潮流を読むこと。何がいま必要かを素直に考えてみることがスタートだと思う。

住友 恵理
1986年生まれ、東京大学工学部建築学科卒業後、イギリスのバートレット建築学校修了。現在、etoa studio一級建築士事務所共同主宰、慶応義塾大学SFC特任助教。


 

【応答文2】
自発的活動による新たな建築家の可能性
(塩脇 祥)

本セッションにおいては、建築の多角的活動をしている建築関係の人が集まった。タイルの工房を持ち材料からデザインまで行う者、世界を旅しながら仕事をこなす者、多岐に渡る。細かな内容については、省略するが(まとまった議論になっていた定かではなく、あまり覚えていないのもあるが。)

議論は、それぞれ共感持ちつつも、各々の専門的な活動を生み出す起源はどこにあるかに注目した。様々な発言が多くあったが、私の主観としての解釈ではあるが、総じて自然的な動きの中で必要な作業としてこなしているにすぎないものであり、本セッションにおける参加者の多くは、それを自発的に取り組み、建築や自分の働き方に昇華している。

本来建築という大きな世界の中で、かつて建築家たちは、設計者であり、学者であり、政治家でもあり画家でもあった。時代背景の中、多くの職業は分業化されてきた訳だが、そうした動きの中で建物設計以外での活動が異なった働きと結びつき新たな可能性を生み出している。また、それが社会の中で需要があり、新たな経済サイクルをつくっているのだろう。

建築とは、何かと議論を持ちだされれば、全てと答えることになるのではないか。それを改めて、本セッションの議論では強く感じた。それぞれの特性自体が建築に表現され、目に見える形だけではない、働き方にも体現されるものとなっている。組織の新たなかたちまでの回答にはいたらないものにはなったが、それ自体が新たな組織のカタなのかもしれず、必ずしも答えのあるべきものではないのかもしれない。

世界的にも、COVID‑19による変革を必要とされている時代の中で建築だけでなく、他業種においても多角的な動きは見られ、各業種間の境界は少しずつではあるが確実になくなっていっているのであろう。建築家として、職能をいかなものにしていくのか。これから我々自身の活動で新たなカタの一歩を踏み出せる機会となった。

塩脇祥
1989年生まれ、神奈川大学修士課程修理後、組織、アトリエを経て、4kado design studio(ヨツカドデザインスタジオ)を共同主宰

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