セッション32 – 市民参加型アクションは都市のプランを変えることができるのか? –
市民参加型のワークショップやヒアリングを通して公共建築を作ることが当たり前になり、タクティカルアーバニズムやプレイスメイキングの手法を用いた、広場や空き地、街路や水辺をDIY的に盛り上げる社会実験や仮設的取り組みも全国で行われている。では、そういった市民参加型の短期的なアクションは、長期的な都市のマスタープランや大規模な再開発に影響を与え、計画を柔軟に変えていくことができるのだろうか?気がつけば完成している、誰の意志で、誰のために作られたのかわからないような都市ではなく、私達の都市を実現させる事はできるのだろうか?まちづくり、都市計画、建築、不動産、それらの枠を超えて、実践的かつ歴史に残る議論を行う。
セッションリーダー:小泉瑛一|オンデザインパートナーズ
登壇者:苅谷智大|株式会社街づくりまんぼう・東北大学教育研究支援員、西山芽衣|株式会社マイキー ディレクター HELLO GARDEN/西千葉工作室 代表、中裕 樹|森ビル、篠元貴之|rhyme design 、茂谷一輝|東京大学、上田孝明|NAD(株式会社日建設計 NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab)
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【応答文1】
市民参加型アクションでこそ都市のプランは変えられる
(苅谷智大)
都市のプランを空間計画に関する諸制度であると考えるならば、現在の都市に求められているのは変革である。もはや創造ではない。急激な人口増加と経済成長を支える基盤としての都市の機能を、急激な人口減少と緩やかで持続的な経済成長を培養する基盤としての機能へとシフトさせなければならない。このパラダイムシフトは、建築、都市計画、道路、税など都市を形作る要素に様々な矛盾を生じさせる。しかも、それらは独立単体では存在せず、複雑に関わり合い社会システム、いわゆる制度として成立している。一つの敷地、一つの街区においていくらその矛盾を解いても、それは特殊解の域を脱し得ない。重要なのは、その特殊性を市民が理解し「そういう空間のあり方もアリだね」と共感を広げていくことである。既定延長にない新たなライフスタイルに対する市民の共感の創出は、市民自身にしか生み出すことができない、と感じている。それこそが市民参加型アクションである。いくら秀逸にデザインされた空間が作り出されそうとも(もちろんそれも非常に価値があり重要である)、それに対して市民が与えるのは評価であり共感ではない。この共感が、仕組みを変えるエネルギーとなり、都市のプランの変革を迫るのである。
苅谷智大
1985年生まれ、東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻博士後期課程修了後、日本学術振興会特別研究員を経て、現在株式会社街づくりまんぼう街づくり事業部部長。