Session17 -都市環境におけるポジティブな制度設計の枠組みとは?-
日時:2017/10/22 16:00~17:00
会場:建築会館ホール
テーマ: 都市環境におけるポジティブな制度設計の枠組みとは?
ゲストメンター:馬場貞幸|黄櫨綜合法律事務所所属/一般社団法人ライツアンドクリエイション理事
登壇者:遠藤貴弘、深田悠平、ウサミキイチロウ、山口陽登、中村健太郎、The Trading City研究会 土橋悟+雨宮知彦+落合正行+小林国弘+照内創
【応答文1】
制度のデザイン
(the TRADING CITY研究会)
『都市環境におけるポジティブな制度設計の枠組みとは?』と題された我々の2017年のセッションでの議論を簡単に要約すると、「現行の制度は、地域を問わず画一的なネガティブチェックや最低レベルの規定を行うルール」となっているが、「金銭以外の多様な価値の包摂」が必要であり、「ローカライズや変わり続けることを許容する柔らかい規範」であることが望まれ、「ローカルでの取り組みがアーカイブされ、制度の有効活用に向けた好循環が生まれることを期待する」という極めてまっとうな内容ではなかったかと、記憶しています。
一方、一見規制緩和の動きが起きていそうに見えつつも、社会はますます硬直的かつ面白みに欠ける制度設計・運用をしている気がしてなりません。制度に基づかないゲリラ的事例や既存制度の程よい解釈によるユニークな事例等を参考に、その取り組みを全国的に横展開(この言葉嫌いです)しようとし、現行制度に上重ねをする形で緩和制度をつくったり、特別措置法を制定したりするものの、そのフレームワークづくりの一環で、ゲリラ的な創造性が失われ陳腐化するということを繰り返している気がします。これは、セッションで議論した「ローカライズ」や「変化の許容」とは逆に、尖ったものをステレオタイプ化する流れとも言えます。
建築、都市計画等の黎明期には、それぞれの実務上の専門家が制度設計・運用のあり方の検討に関わってきました。制度「設計」と言うように制度の立案はクリエイティブな作業です。また、金銭以外の多様な価値を認めた制度をつくり上げるためには、文化的なリテラシーが必要となります。制度の運用にあたっても、ルールへの適合への判断を細かく行うのではなく、創造的な取り組みが都市や環境、はたまた少し先の未来にとって良い影響を与えるようであれば許可する等の個別判断が重要です。
再び制度の設計・運用のプロセスに我々建築家、都市デザイナー等の創造的思考を武器とする専門家が関わる必要があると考えています。
the TRADING CITY研究会
土橋悟・雨宮知彦・落合正行・照内創・関根千紗乃・平嵜大地からなる建築家・都市デザイナー集団。当事者間の利益のみならず、外部効果も発揮する関係づくりを目指し、多様な価値観に基づく「トレード」によって、都市やまちの最適化・流動化を促す新たな方法論の研究等を実施