01.みなと建築案内センター
期間限定で建築案内センターが会場内にオープン。田町エリア を中心に、港区の魅力的な建築情報を提供します。建築マップの配布、おすすめコースの紹介、建築情報提供などをおこないます。
(金~日、祝日のみ)
02.ガイダンス・パフォーマンス
会期中、若手建築家による「建築をガイダンスする」 をテーマとしたイベントを開催。建築家独自の視点か らの建築散策ツアーなど、実験的なガイダンスを実施します。
【10月6日(日)10:00~12:00】
宮城の木をいっしょに運ぶ|建築ダウナーズ
宮城県の山で伐られた丸太を、協力して芝公園から建 築会館まで運びます。建築生産と森林環境との繋がり や現状を休憩中に紹介し、都市と森の関わりについてガイドします。
・集合場所:港区芝公園(場所の詳細は参加者に後日連絡します)
・参加方法:こちらの申し込みフォームより事前申し込み
⇨https://forms.gle/45Hk8msyqTojsL31A

建築ダウナーズ
東北大学大学院都市·建築学専攻出身の菊池聡太朗、千葉大、吉川尚哉からなるデザインチーム。これまでに、公共施設の什器設計/制作や、美術展の会場設計、木材をめぐるリサーチプロジェクトなどを行なう。
【10月6日(日)14:00~15:00】
建築にやさしく絵を置く|tandem
展覧会の会場構成などを手掛ける建築家の佐藤熊弥 と、絵描きの奥誠之による「建築会館に絵を飾る」パ フォーマンス。模型を見ながらどこに絵を置くか話し合い、実際に展示する行為を通して、空間をガイドすることの意味を探ります。
・集合場所:建築会館1階建築博物館ギャラリー
・参加方法:直接会場にお越しください
佐藤熊弥
1991年東京都生まれ。2017年東京藝術大学油画修士課程修了後、2020年早稲田芸術学校卒業、2019-2023年西澤徹夫事務所にて多数の展示デザインを担当。2023年に加来悠と共にtandem開設。主な仕事に「ある家族の会話」「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築会場構成/パナソニック汐留美術館」(いずれも2024)。
【10月14日(月・祝)15:00~17:00】
都市を〈カンショウ〉する|津川恵理(ALTEMY)
身体と空間のインタラクションを重視したデザインで注目を集める建築家が、東京の都市をガイダンスします。見ること中心の鑑賞から、人とモノが干渉し、ま た両者の間を緩衝するような体験を生み出します。
・集合場所:東京ミッドタウン(場所の詳細は参加者に後日連絡します)
・参加方法:こちらの申し込みフォームより事前申し込み
⇨https://forms.gle/45Hk8msyqTojsL31A

津川恵理
建築家。ALTEMY株式会社一級建築士事務所代表。2015年早稲田大学創造理工学術院修了。組織設計事務所勤務を経て、2018年より文化庁新進芸術家海外研修員としてDiller Scofidio+ Renfro (New York)に勤務。2019年神戸市主催「さんきたアモーレ広場」デザインコンペ最優秀賞を受賞をきっかけに帰国し、ALTEMYを設立。
03.建築ガイダンス展示
全国各地で行われている建築の公開イベントや案内ツアーを紹介します。各主催団体へのインタビューや、 実際にガイダンスのために制作されたマップやパンフレットなどのツールや技術も合わせて展示します。
【参加団体・イベント】
・東京建築アクセスポイント(https://accesspoint.jp/)
・生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(https://ikenchiku.jp/)
・ひろしまたてものがたりフェスタ(https://tatefesta.info/)
・京都モダン建築祭(https://kyoto.kenchikusai.jp/)
・神戸モダン建築祭(https://kobe.kenchikusai.jp/)
・東京建築祭(https://tokyo.kenchikusai.jp/)
・Local Places(https://sites.google.com/view/local-places/home)
・山川陸(https://yamakawariku.wraptas.site/)
ほか
関連企画
【10月12日(土)、13日(日)】
トウキョウ建築まち歩き 2024「ブラ田町」
長年、建築メディアに携わってきた案内人が、みなと 建築案内センターにて、あなたにぴったりのおもしろい建築物やエリアを解説します。
・ナビゲーター=大森晃彦(建築メディア研究所代表)
開催レポート
近年、日本各地で建築公開イベントが人気だ。そこでは地図やガイドブック、またはガイド(案内)による観客への導きなどさまざまな在りかたを巡るガイダンスが試みられている。いわゆるプレゼンテーション(作品やアイデアの一方的な提示)とは異なり、参加者が何かを解釈することに歩み寄りやさしく開いていく行為としてガイダンスを捉えることができる。そこでこのガイダンスという行為に着目し、建築と人々の関係を探る展覧会を開催した。会期は10月3日~14日の12日間。会期中は建築会館の中庭に面したスペースの一部をテンポラリーな建築案内センターとして公開し、東京都港区を中心とした建築や都市空間を巡るための案内を行うとともに、ガイダンスのために制作されたツールや技術の展示と建築をガイダンスするパフォーマンスを実施した。
中庭空間に設置されたみなと建築案内センターでは、マップの配布のみならず来場者が港区内のおすすめ建築をマップに貼っていくなど、インタラクティブな方法を用いた。単に建築の名前を書くだけでなく、関連エピソードをお話しくださったのが印象的だった。数年前まで存在していたのに、もうなくなったというような話も何度も伺った。近年の開発の規模と速さを実感することになった。平日も中庭は多くの通行人や昼食を食べるサラリーマンで賑わうが、地図があることで興味を持ってのぞいてくださる方の姿も見受けられた。今回の取り組みは一時的なものだったが、建築会館に一般の方やツーリスト向けの案内機能が備えられることの可能性を感じることができた。
展示では全国各地で実施されている建築公開イベントや案内ツアーにおける、ガイダンスを可能にする、あるいはサポートするツールや仕組みを5つの働き(まわす、盛り上げる、手伝う、標す、まとめる)から紹介した。参加者を案内するためのバナーやガイドブックから、スタッフ用のアイテムなど、各団体の取り組みと連動したさまざまなガイダンスのアーキテクチャーが集まった。ユニフォームやスタッフ証など関係者であることを明示し、現場に必要なものをまとめるためのサコッシュなどは、参加者に安心感を与えるだけでなく、イベントの実施を広く知らせることでガイダンスをうまく「まわす」ことにつながる。ロゴ入れのトートバッグや缶バッチなど、ガイダンスの気分を「盛り上げる」グッズも欠かせない。各団体がそれぞれ工夫しながら、様々な知恵やアイデアを生み出していることがわかり、今後はこのような蓄積が共有されていくことで、さらに各地のガイダンスイベントの充実が期待される。
さらに会期中には若手建築家3組によるガイダンスパフォーマンスを実施した。これは建築家独自の視点からの建築散策ツアーなど、実験的なガイダンスを実施するというものだ。仙台を拠点に活動する建築ダウナーズは、宮城の山から切り出した丸太を港区に持ち込み、それをみんなで担ぎながら街の中を歩くというパフォーマンスを実施した。これは彼らが現在リサーチしている木材流通の現場を伝えるための仕掛けになっており、参加者は建築家の言葉に耳を傾けながら、かつて港区内にも存在していたであろう材木店や流通経路などを辿った。製材された木材か管理された街路樹しか存在しない都心部で、丸太を運ぶという非日常的な行為によって、改めて都市の成り立ちやその背後のインフラに目を向けることになった。tandemのパフォーマンス「建築にやさしく絵を置く」は、もともと油画出身の建築家の佐藤熊弥と長く共に活動する画家の奥誠之による、展示会場内に彼らが今回用に描いた油絵数点を設置するというもの。建築家と画家がどのように空間を読み取り、また絵を置くことで来場者の視線や行為を優しく誘導することが目論まれた。空間を読み取るというのがどのようなことかを示すパフォーマンス?でもあったと言えるだろう。身体性を刺激する建築や都市空間を手掛ける津川恵理による「都市を〈カンショウ〉する」は、港区内の地形や構造物に対して身体との相互作用を探る参加型のパフォーマンス。参加者はまず、津川が手がけた東京ミッドタウン内のインスタレーションを体験し、その後3種類の緩衝材をそれぞれ手に取り、歩きながら都市空間への干渉を試みた。普段の視覚重視のものとは異なる身体と都市のオルタナティブな鑑賞である。
現在まで人類はものをつくり、建てる技術や知恵を積み重ね、伝え継いできた。日々生きる中で、わたしたちはときに何かに導かれつつ、在りかたと出会い直す。意識的であるか無いかに関わらず、私たちの世界にはさまざまな導きの糸、あるいはガイダンスが溢れているのだと実感する展覧会となった。
川勝真一(建築センターCoAK代表理事)
桂川 大(STUDIO 大/おどり場代表)
写真:Kaori Yamane