開催レポート
本イベントは、建築文化週間における学生主体の企画である。実行委員には全国の大学から35名が参加し、例年よりも大規模な体制となった。2024年1月1日に発生した能登半島地震から数か月が経過したが、被災地では依然として今後の展望が見えない状況が続いていた。このような状況に対し、行動したくても行動できないもどかしさを抱える学生たちが集まり、学生が何かできることはあるのかを考えることから本イベントが開始した。 本イベントでは、主にワークショップ、関連企画展示を軸に、能登半島地震に対して「思い、考える」機会をつくった。イベント当日は、能登半島地震に対して学生ができることを考えるワークショップを開催した。関連企画展示では、すでに能登半島で何らかの行動をしている外部の方々の活動と、実行委員がリサーチした内容を展示した。
学生ワークショップ2024イベント当日(撮影:日本建築学会)
①ワークショップ 「わたしたち学生は、能登半島地震とどのように関われるのか?」
本ワークショップは、2024年10月19日と20日の2日間にわたり建築会館ホールおよび動画配信にて開催された。全国から建築や都市を学ぶ学生が新たにワークショップ参加者として集まり、実行委員はファシリテーターとして参加した。本ワークショップの目的は、遠方で発生した地震に対し、建築や都市を学ぶ学生がどのように関われるかを議論することであった。
1日目にはシンポジウムと中間講評が行われた。シンポジウムでは、お招きした3名の先生方のほかに実行委員から2名(半田洋久、花岡桃可)、窪田教授の研究室から3名(松尾朋輝、堀口耕平、伊藤江星)の計5名が登壇した。シンポジウムを通じて、参加者には能登の被災後の歩みと現状、復興への取り組みを知ってもらった。その後、班ごとに議論を行い、被災地の復興を「自分事」として捉え、現地にとって価値のある提案を考えた。
2日目は1日目の考えのブラッシュアップと最終講評を行った。能登を離れた子どもと被災地をつなげるための青空教室プロジェクトの提案や、瓦礫や瓦を用いて家具をつくり、小さな居場所を生み出しつつ被災した風景を残す提案など、素晴らしい提案が出揃った。最終講評では、5名の審査員から各アワードが授与された。なかでも街づくり型応急仮設住宅にのれんを設置して語り合う空間をつくり出す提案は、実現に向けた具体的な可能性が期待され、今後の活動に大きな希望を見出すことができた。
ワークショップの様子(1日目)(撮影:塩見悠一郎)
最終講評の様子(2日目)(撮影:塩見悠一郎)
②関連企画展示「いま、能登半島地震に対して何を思い、考えるか?」展
同時に2024年10月19日から21日の3日間、能登半島地震の復興に何らかのかたちで関わる方々と実行委員による展示会「いま、能登半島地震に対して何を思い、考えるか?」展を建築博物館ギャラリーにて開催した。外部出展者の方々のパネルや立体地図、模型、モックアップから、被災地が復興していく未来を感じることができた。なかでも、青柏祭の曳山行事で用いられる山車を5分の1のサイズで再現した「ちびでか山」(岡田翔太郎建築デザイン事務所)は復興への思いが込められた作品で、来場者を魅了した。「仮設間仕切り」(坂茂建築設計+ NPO 法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク)や「インスタントハウス」(北川啓介+北川珠美)は、実際に中に入ることもでき、避難所でのプライベート空間の保ち方を疑似体験することができた。実行委員は能登半島に訪れた際の写真や映像、現地の声、地形や伝統文化、地震の被害などについて調査した結果、そして現地で許可をもらって持ってきた「ガレキ」などを展示にまとめた。
関連企画展示(撮影:塩見悠一郎)
このイベントを機に、能登半島地震について一人ひとりが考え続け、実践に向かう一助となれば幸いである。被災地の暮らしが一日でも早く平穏を取り戻せるよう心よりお祈り申し上げる。
シンポジウム:小野田泰明、小津誠一、窪田亜矢
最終講評:小野田泰明、竹内申一、窪田亜矢、山岸綾、岡田翔太郎
司会:松田達
展示会出展者:
GAPPA noto、株式会社 kyma、VUILD 株式会社、岡田翔太郎建築デザイン事務所、北川啓介+北川珠美、小浦久子+片桐由希子、小津誠一、東京大学都市工学科、東北大学都市デザイン研究室、ニシムラ精密地形模型、萩野紀一郎、坂茂建築設計+ NPO 法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク、山岸綾、学生ワークショップ 2024 実行委員
参加者:延べ477名(うち動画配信302名)
学生ワークショップ2024実行委員:
半田洋久(代表/芝浦工業大学)、小堀涼雅・松尾結実子・安島芽生・福島はな(慶應義塾大学)、衣笠恭平(横浜国立大学大学院)、福田理緒・飯島さら・田中恒暉・向井元基(横浜国立大学)、花岡桃可(東京大学大学院)、久冨柊司(東京大学)、小島智寿(金沢工業大学大学院)、塩見悠一郎(京都府立大学大学院)、征矢俊介・吉野仁輝(東京電機大学)、千國桜子(富山大学)、小泉満里奈・奥島万詠(早稲田大学)、二渡杏・角尾風歌・山本承太郎(芝浦工業大学)、中村來珠・山本洸生(大同大学)、芝崎遼太(大阪工業大学)、木下裕翔・猪股桜子(近畿大学)、森田優希(信州大学)、玉野亮祐(東京都市大学)、田畑快人(東京都立大学大学院)、加賀美和希(東洋大学大学院)、樋上稜太(東洋大学)、大貫陽向吾・森田真央(京都工芸繊維大学)、吉葉鴻貴(国士舘大学)(計35名)
[花岡桃可、半田洋久/学生ワークショップ2024実行委員]