AR・VRを活用したまちづくり

シンポジウム・講演会

レポート

第5回 地域再生・活性化の建築力

AR・VRを活用したまちづくり

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まちづくりへのAR・VR活用のメリットとして、設計の質・効率の向上、PR力や集客力向上、安全・防災機能の強化、新たな体験の提供などが挙げられます。今回、古賀元也氏から、熊本市中心市街地を中心にIT技術を活用したまちづくり手法の提案と実践として、①車いすナビの開発、②防災マップづくり支援システムと災害イメージARアプリの開発、③メタバース商店街等についてご紹介いただきます。また、多米淑人氏からは、VRコンテンツとして現存しない福井城を高精細に再現した福井城復元アプリの開発、歴史理解の促進や観光資源として活用する取り組みについてご紹介いただきます。地域の活性化におけるIT技術の活用法や将来展望に対する考え方などをお聞きしたうえで、意見交換を行います。

開催概要

主催 日本建築学会北陸支部福井支所
日時 2024年9月28日(土)14:00~16:00
会場 福井大学総合研究棟Ⅳ2階223L講義室(福井県福井市文京3-9-1)およびオンライン
講演者 古賀元也(崇城大学准教授)
多米淑人(福井工業大学教授)
対象 どなたでもご参加ください。
定員 対面参加 100名(申込先着順)
オンライン参加 100名(申込先着順)
参加費 無料
申込方法 9月13日(金)までにE-mailにて、タイトルに「2024建築力申込」、本文に「氏名、所属先、連絡先(TEL、E-mail)、参加方法(対面orオンライン)」を明記のうえ、お申し込みください。
申込先・問合せ 福井大学 工学部建築建設工学講座 桃井良尚
E-mail:momoi@u-fukui.ac.jp

開催レポート

福井支所では、9月28日(土)にシンポジウム「AR・VRを活用したまちづくり」を開催した。まちづくりへのAR・VR活用のメリットとして、設計の質・効率の向上、PR力や集客力向上、安全・防災機能の強化、新たな体験の提供などが挙げられる。

今回、古賀元也先生(崇城大学)から「IT技術を活用したまちづくり手法の提案と実践」と題して、熊本市中心市街地を中心にIT技術を活用したまちづくり手法の実例をご紹介いただいた。具体的には、AR技術に振動と音声を組み込んだ用いた視覚障害者のためのAR点字ブロックアプリ、車いすナビの開発、防災マップづくり支援システムや災害時の要援護者の避難行動支援アプリなど、安全なまちづくりに関わる多岐にわたる研究事例についてご紹介いただいた。また、酒蔵をリノベーションした御船町のカフェや熊本市内の商店街にある「オモケンパーク」、AIまちづくりコンシェルジュの開発など、メタバースを使って店舗やまちの魅力をPRする試みについても大変興味深い内容でした。メタバース空間を作成するために、CADから作成するのではなく、被写体をさまざまなアングルから撮影し、そのデジタル画像を統合して立体的な3DCGモデルを作成するフォトグラメトリー手法を使うことで、メタバース空間を作成する手間を大幅に削減できる可能性を感じることができた。試行錯誤しながら、画像を高精度化している苦労話もお伺いすることができた。

古賀先生によるIT技術を活用したまちづくりの講演風景

また、多米淑人先生(福井工業大学)からは、「福井城復元VRの活用事例」と題して、VRコンテンツとして現存しない福井城を高精細に再現した福井城復元アプリの開発、歴史理解の促進や観光資源として活用する取り組みについてご紹介いただいた。古い絵図と現状市街地図を重ね合わせて分析した通りの現存状況や全国共通の体験型XR観光アプリ「ストリートミュージアム」についてご紹介いただいた。一度現地に赴かないとデータを取り込むことができないというところがポイントで、実際の体験を補足できたり知られていなかった魅力を発見できたりするメリットがあることの説明があった。AR・VRアプリによってかつての城郭の姿を現実に近い形で再現することで、城郭の復元に向けた寄附の募集にも一役を担っているというお話もお聞きすることができた。柱の太さなど様々な資料からいかに精度のよい再現を行うかについての議論があった。

多米先生による福井城復元VR技術の講演風景

講演会には全体で計36名が参加したが、AR・VRに関する講演会ということもあって25名がオンライン参加で全国各地から参加された。パネルディスカッションでは、端末操作の簡易化(アクセシビリティ)や今後の展開や技術の活用方法、歴史的建築物のデジタル保存、3Dスキャンによる被災地の罹災証明への活用についてまで議論が広がり、さまざまな意見交換を行うことができた。おふたりの講師の先生のお話を伺って、メタバース空間で完結させるのではなく、現実のまちがメインで、メタバースはあくまでリアル空間を活性化するためのきっかけとして活用するべきであるという共通認識が得られたのではないかと感じた。現地に行かないとその場の空気や匂い、周辺の街並みや文化が分からないのでリアルな体験が重要である。メタバースをリアル空間の活性化にいかに繋げるかについては課題があるが、目的とするもの単体で多くの人を呼び込むことが難しいが、食文化や親子での体験なども取り込んで総合的にまちの魅力を発信していく必要がある。本シンポジウムのテーマである「地域再生・活性化」のためには、システムを作ることが目的ではなく、システムを活用してどのようなまちをつくりたいかが重要であり、技術を活用してどういった将来像を描くことができるかを考えなければいけないということを再認識させられた。

パネルディスカッションの様子

[桃井良尚/福井大学]

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