人類の価値観を変えたい

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カルチベートトーク2025

人類の価値観を変えたい

チームラボと境界のない世界

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2001年から活動を開始したアート集団「チームラボ」は、集団的創造によって、アート、サイエンス、テクノロジー、そして自然界の交差点を模索している国際的な学際的集団。アートによって、自分と世界との関係と新たな認識を模索しており、最近は2025年4月18日にアブダビに「teamLab Phenomena Abu Dhabi」を、2025年10月7日に京都に「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」をオープン。世界中の人々を魅了しています。
今回は、世界各地のチームラボのアート展に携わってきた工藤 岳さんに登壇いただき、チームラボの根底にある哲学や考え、これまでの取り組みなどについて、語っていただきます。

開催概要

日時 2025年10月28日(火)18:30~20:00(開場18:00)
会場 建築会館ホール(東京都港区芝5-26-20)およびリアルタイム動画配信(予定)
講演者 工藤 岳(チームラボ)
モデレーター 濱野裕司(竹中工務店執行役員)
対象 どなたでもご参加ください。
定員 建築会館ホール 200名(申込先着順)
動画配信 定員制限なし(事前申込み不要)
参加費 無料
申込方法(建築会館ホール) 上記の「お申し込み」ボタンから専用フォームにアクセスのうえ、お申し込みください。
視聴方法(動画配信) 本会YouTubeチャンネルにて開催当日にご覧ください。
https://www.youtube.com/aijgakkai1886/
工藤 岳(くどう たけし)

2009年末にチームラボに参画。ソーシャルブランディングチームを立ち上げ、ニューヨーク、ロンドン、パリなど世界各地のチームラボのアート展や、最近では、大型常設展「チームラボフェノメナアブダビ」に携わる。

開催レポート

2025年10月28日、カルチベートトーク2025では、アート集団・チームラボより工藤 岳氏をゲストに迎え、「人類の価値観を変えたい ― チームラボと境界のない世界」と題して開催した。モデレーターは、本企画を長年手がけてきた竹中工務店執行役員・濱野 裕司が務めた。

工藤氏は2009年末にチームラボに参画し、ソーシャルブランディングを担いながら、ニューヨーク、ロンドン、パリなど世界各地での展覧会や、近年では「teamLab Phenomena Abu Dhabi」などの大型プロジェクトに携わってきた。本講演では、作品紹介にとどまらず、チームラボが一貫して問い続けてきた「人と世界の関係性」について、その思想的背景が語られた。

チームラボは2001年から活動を続ける、アート、サイエンス、テクノロジー、自然を横断する学際的な集団。プログラマー、エンジニア、数学者、建築家など、分野の異なる専門家が集団的に創造を行う点に大きな特徴がある。濱野より冒頭、「建築や都市もまた、人と人との関係性をどう編み直すかという問いを避けて通れない時代にある」と問題提起し、本日の講演が建築や都市の未来にも深く関わる内容であることを示した。

講演の中心となったのは、チームラボの作品に通底する考え方である。従来の美術作品は、完成された「モノ」を鑑賞者が外側から眺めるものだった。一方、チームラボの作品では、鑑賞者は作品の内部に入り込み、自らの行為によって作品が変化していく。作品は固定された存在ではなく、人の存在によって生成し続ける「現象」として立ち現れる。
象徴的な例として紹介されたのが、《Flowers and People, Cannot Be Controlled but Live Together》である。この作品では、人が動き回ると花が散り、静止すると花が咲く。ニューヨークでの展示初期には来場者が殺到し、空間から花が消えてしまった。しかしその後、来場者同士が「人が多すぎるのではないか」と話し合い、自発的に人数を減らしたことで、再び花が咲き始めたという。工藤氏はこの出来事について、「他者の存在をどう扱うかという価値観が、作品体験を通じて自然に変化した瞬間でした」と振り返った。

ここで濱野より、ルーヴル美術館の《モナ・リザ》との対比を示した。どれほど混雑していても、鑑賞者同士がその状況について議論することはほとんどない。それは、作品が鑑賞者の存在によって変化しないからである。チームラボの作品は、鑑賞者同士の関係性そのものを作品の一部として組み込むことで、「他者の存在を無視する」のではなく、「他者と共にある」体験を生み出している。

さらに講演では、子どもが走り回ることや、疲れた人が空間で眠ることさえも、作品をより豊かにする事例が紹介された。従来の美術館では排除されがちな行為が、ここでは肯定的に作用し、人の多様な在り方を包摂する空間が生まれている。工藤氏は、「デジタルアートは、人と人との関係性をポジティブに変える力を持っています」と語った。

後半では、2025年に開館した「teamLab Phenomena Abu Dhabi」や、同年10月にオープンする「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」が紹介された。京都のプロジェクトでは、「環境が現象を生み、その現象が存在をつくる」という考え方のもと、建築そのものが作品体験を生み出す環境として位置づけられている。

本講演を通して明らかになったのは、チームラボが目指しているのは単なるデジタル表現の拡張ではなく、「人類の価値観そのものを変える試み」であるという点である。最後に「建築や都市もまた、人と人との関係性をどうデザインするかが問われています。他者の存在を競合や障害としてではなく、世界をより美しく、豊かにする要因として捉え直すこと。その思想は、アートにとどまらず、建築や都市、社会の在り方にも深い示唆を与えるものであり、本日の話は、その重要なヒントに満ちていました」と締めくくり、盛況のうちに会を閉じた。

[濱野裕司/竹中工務店執行役員]

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