活動レポート
2025年10月25日(土),主催:日本建築学会九州支部沖縄支所で,建築文化週間2025「沖縄の近代コンクリート建築物からみる建築文化と継承」見学会を実施し,沖縄県内から17名の参加がありました。
沖縄県は,日本国内で最も鉄筋コンクリート(RC)建築物が多く普及している地域です。その背景には,台風や塩害といった厳しい自然環境への適応,戦後復興期の米軍統治下での建築技術の導入,そして地域の歴史・文化が深く関係しています。これらのコンクリート建築物は,沖縄の文化や社会を反映し,地域住民の記憶に刻む重要な資産です。本見学会では,沖縄の近代コンクリート建築物を通じて,地域に根差した建築文化を再発見し,これらの建物がどのように時代を超えて受け継がれているのかについて,「歴史的背景の理解」,「建築文化の再発見」,「保存と継承の取り組み」を中心に学ぶ機会を提供することを目的としています。
当日は,大宜味村役場旧庁舎,今帰仁村中央公民館,名護市庁舎の3施設を訪問しました。最初に訪れた大宜味村役場旧庁舎(1925年竣工)は,清村勉氏の設計による重要文化財であり,沖縄戦による壊滅的な被害を免れ,戦前の建築として現存する数少ない建物の一つです。モダンな意匠,床の目地,五角形の柱,壁や天井の細工など,細部にまでこだわった設計が特徴です。特に,施工においては,約200人が5日間かけて打設を行ったとされ,当時の大宜味大工や施工者の技術力と心意気が随所に感じられました。旧庁舎見学を通して,時代を追って受け継がれるものと,考え方が変わりゆくことを垣間見ることができました。
次に訪れた今帰仁村中央公民館(1975年竣工)は,象設計集団による設計で,中庭を囲むように配置された大屋根を,276本の赤い柱が支える構造となっています。半屋外空間が連続し,人々の交流や憩いの場として機能するように工夫された,今帰仁の象徴的建築です。現在は,屋根スラブの鉄筋腐食によるコンクリート剥落のため使用禁止となっていますが,北山文化圏センター整備基本計画においては,同公民館を存続させ,まちづくりに活用する方針が示されています。当日は,株式会社国建及び今帰仁村役場の担当者より,整備計画の概要について詳細な説明をいただきました。
最後に訪れた名護市庁舎(1981年竣工)は,象設計集団による設計で,住民のための空間「アシャギテラス」や,海風を室内に導く「風の道」など地域環境を活かした設計が特徴です。一方で,塩害による柱や梁の腐食が進行しており,庁舎の高台移転が決定されています。当日は,これらの設計意図や現状について,講師の先生より詳細な解説をいただきました。参加者からは,「建物が造られた時代背景,当時の資源や技法について学べたことがよかった。普段車窓から眺めるだけではわからなかったが,実際に説明をうかがうと建物の重要性を痛感した」,「沖縄の戦後,復帰,現代,という流れを押さえていただきながら,その時代時代で支持された建築物を教えていただき,沖縄建築の見方を知ることができた」との感想が寄せられました。
見学会終了後に実施したアンケート(10名回答)では,全体の満足度について「非常に満足」「満足」との回答が多数を占め,プログラムの日程や時間配分についても高い評価をいただきました。また,「今後このような見学会が開催された場合,参加したいと思いますか」との質問に対しても,全員が「ぜひ参加したい」「参加したい」と回答しており,本見学会に対する高い関心がうかがえました。参加者からは,「専門知識者とのツアーは実に充実!有料にしてでももっとこの様な機会が増えると良いと痛感!」,「何も知らなければ,古い建物としか見えず取り壊している。歴史や設計時の考えを少し知って,見方が変わった」といった声が寄せられ,専門家による解説を聴きながら実際の建物を見学することの意義が確認されました。
本見学会は,沖縄における近代コンクリート建築の保存と活用に対する理解を深める貴重な機会となりました。講師の先生方には,建築文化の継承に関する多角的な視点をご提供いただき,また,開催にあたりご協力いただきました大宜味村役場,今帰仁村役場,株式会社国建,名護市役所をはじめとする関係者の皆様に心より感謝申し上げます。