第48回「北海道建築賞(2023年度)」表彰式・記念講演会

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第48回「北海道建築賞(2023年度)」表彰式・記念講演会

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2023年度第48回北海道建築賞を受賞された方々に、受賞作品を語っていただき、その後パネルディスカッションを開催いたします。

開催概要

主催 日本建築学会北海道支部
日時 2023年10月27日(金)18:00~20:30
開催地 北海道大学遠友学舎(北海道札幌市北区北18条西7)
講演者 北海道建築賞受賞者
対象 どなたでもご参加ください。
定員 50名(申込先着順)
参加費 無料
申込方法 E-mailにて「氏名、所属先、住所、電話番号」を明記のうえ、お申し込みください。
申込先・問合せ 日本建築学会北海道支部
TEL:011-219-0702 FAX:011-219-0765
E-mail:aij-hkd@themis.ocn.ne.jp

開催レポート

 第48回北海道建築賞の表彰式・記念講演会が、10月27日(金)夕刻より北海道大学遠友学舎において開催された。当日の会場には、建築業界関係者をはじめ、大学関係者、学生など50名ほどが集まり、親密な雰囲気のなかで行われた。
 表彰式では、北海道建築賞として「Showcase」(久野浩志君/久野浩志建築設計事務所)が発表され、受賞者に表彰状と副賞のブロンズ彫刻が手渡された。その後、北海道建築賞委員会主査の小澤より審査経緯・結果および審査講評について報告を行った。
 北海道建築賞は、1975(昭和50)年の第1回以来、その年の応募作品の中から本賞にふさわしい作品を選定してきた歴史がある。一昨年春以来続いている、新型コロナウイルスやインフルエンザの感染が依然として懸念される状況のため、昨年度に続き本年度の募集は予定通りに行うも、できる限りの感染防止対策を講じつつ慎重に審査を進めた。審査対象として受理した8作品について、例年通り「先進性」「規範性」「洗練度」を基本的な評価軸とし、書類審査によって選ばれた4作品の現地審査を経て、北海道建築賞1作品を決定、北海道建築奨励賞は該当なしとなった。本賞の決定ならびに授与が、本年も予定通りに行えたのは、施主や設計者の協力により安全な現地審査を行うことができたこと、また、委員会において時間をかけた活発な議論ができたことによる。
 「Showcase」は、札幌市宮の森の住宅地にたつ設計者自身の自邸である。四季と日々の時間の流れのなかで、近景に住宅周囲の地面にある表情豊かな緑の姿を、中景と遠景に山々の稜線が重なる眺望の豊かさを、五感によって享受できる住宅である。全体がひとつのキュービックなボリュームに纏められ、小さなトイレを除き、すべての生活空間は、建物を構成する外壁・床・屋根のシンプルかつ大きな面によって、その仕切られ方、空間、視線の繋がり方が緻密にコントロールされ内外に開放されている。その空間構成、架構の構成方法、開口部や造作家具のディテール、オリジナルの金物類、設計者のこれまでの経験に裏打ちされた積雪寒冷地における快適な室内環境を担保するための仕様、仕上げ材料の意匠性、施工における経済性に至るまで、この住宅を実現するために投入されたさまざまな工夫には設計者の目が行き届いている。設計者の極めて挑戦的かつ実験的な態度と、この作品において達成されている成果に対して、委員全員から高い評価を受けての北海道建築賞受賞となった。
 表彰式に続いて受賞者による記念講演会として、久野浩志君から「Showcase」の設計についてのプレゼンテ─ションが行われた。広がる水面が抽象画を想起させる住宅のルーフスケープ写真から始まり、キューブ状の空間に浮かぶ2階床面、豊かな植物を育む住宅周辺の地面、建具や造作のディテールに至るまで、本建築作品に対する考え方が、構造計画や断熱・遮熱技術とともに丁寧に語られた。
 続いて行われた記念パネルディスカッションは、2名の委員会メンバーがモデレーターを務め、設計者と対話する形で進められた。住まい手ならびに生活を取り巻くモノの解像度をあげること、その見え方、この住宅がもつ抽象性と具象性、汎用性と普遍性、外部空間との関係性など、モデレーターからいくつかの手がかりが提示され、これに設計者が応答した。また、本受賞作品に住む建築環境を専門とする家族から、一般的な環境工学とは異なる視点から設計された本住宅に対する率直な意見も述べられた。議論は、具体的な設計プロセス、意思決定要因、設計者自身の哲学的な思考領域にまで及び、それに対して会場から複数の質問が寄せられるなど、単なる積雪寒冷地における技術論に留まらない、一般化を目指す設計論の構築に向けた多くの示唆に富んだパネルディスカッションとなった。

[小澤丈夫/北海道建築賞委員会主査]

記念パネルディスカッションの様子
写真撮影:小澤丈夫

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