鹿児島麓散歩
日本の原風景の一つに、山裾に田畑が広がり、鎮守の杜や屋敷林の樹木の合間に茅葺きや瓦葺きの屋根が見え隠れする美しい景観があります。一般的には、それらを麓の風景と呼びますが、鹿児島の「麓」は、近世の薩摩藩が治めた集落を「麓」と呼び、旧薩摩藩の領内に、武士を集住させた約125ヵ所の「麓集落」がありました。鹿児島県内に約100ヵ所、宮崎県下にも20ヵ所を越える「麓集落」があったと考えられており、国境の麓は防衛の役目を担い、河川や街道にも「麓集落」が配されたため、「薩摩は城を造らず、人をもって石垣となす」とも言われてきました。そして、これらの「麓集落」では、熊本以北の街並みとは異なる、風土に根ざした美しい景観が培われてきました。「麓集落」は、石垣と生垣、武家門、井水や用水路、平屋の住宅群が並び、明治、大正、昭和の各時代に継承、更新されながら鹿児島の地域の経済や文化を担ってきましたが、過疎化や高齢化の中で長年培われたそれらの景観が失われようとしています。
今回は、その「麓集落」のなかでも薩摩半島の集落を散策し、国の重要伝統的建造物群保存地区として1981年に選定され、すでに40年以上経過した知覧麓と、2019 年に選定された南さつま市加世田麓を中心に巡るバスツアーを行います。また、東シナ海に面した秋目麓等も巡り、麓集落の魅力と鹿児島の自然を体験いただきたいと思います。