徳島で考えるこれからの環境と建築

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徳島で考えるこれからの環境と建築

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 現在、地球温暖化、災害の激甚化、新型コロナウイルス感染症への対応など、地域の環境や建築を取り巻く課題が多様化しています。そのようななか、今後も、地域社会で安全に、安心して、楽しく生活していくためには、その基盤である建築に何が求められるのでしょうか。これまで、繰り返し議論されてきたテーマですが、ローカル、グローバル両方の視点から、現在の地方が抱える課題と可能性、そしてそれを踏まえた今後の姿を徳島で考えます。まず、パーマカルチャーや環境共生建築の分野でご活躍されている、NPO法人エコロジー・アーキスケープ理事長・糸長浩司氏から基調講演をいただきます。この内容を受け、後半は徳島の地域性を題材にしながら、パネルディスカッション形式で、これからの建築を議論いたします。

開催概要

主 催 日本建築学会四国支部徳島支所
日 時 10月1日(土)13:30~17:00(開場13:00)
会 場 徳島市内およびオンライン
講演者 糸長浩司(エコロジー・アーキスケープ理事長)
新居照和(新居建築研究所)
和田善行(TSウッドハウス協同組合理事長)
丸浦世造(三好みらい創造推進協議会代表理事)
フードハブ・プロジェクトほか
対 象 どなたでもご参加ください。
参加費 無料
申込み 事前申込み不要。直接会場へお越しください。
問合せ 日本建築学会四国支部徳島支所
徳島大学大学院 社会産業理工学研究部社会基盤デザイン系 渡辺公次郎
〒770-8506 徳島県徳島市南常三島町2-1
TEL:088-656-7612 E-mail:kojiro@tokushima-u.ac.jp

開催レポート

10月1日(土)、徳島文理大学徳島キャンパス21号館国際会議場において、シンポジウムを行った。会場参加者25名、オンライン参加者15名であった。
まず、NPO法人エコロジー・アーキスケープ理事長・糸長浩司氏から「人新世におけるレジリエントでエコロジカルな建築・まちづくり-世界のエコアクションと建築学会SDGs宣言-」と題する基調講演があった。
昨今の地球環境は危機的状況にある。富裕層は多くの二酸化炭素を排出し、資本主義のあり方も転換が求められている。IPBESの報告によると、今回のパンデミックは、人間による生態系の混乱、農業も含んだ土地利用の改変が原因と指摘されている。東日本大震災で放射能汚染された福島県飯館村の山間部には現在でも汚染物質が残っており、豪雨時の流下も懸念される。人間は地球に対し大きな負荷をかけすぎている。青木志郎氏(東京工業大学名誉教授)は、人間が生きていくうえで必要となる社会経済と、それを支える空間、環境は、一緒に考えるべきと指摘している。大きな資本に頼るのではなく、地域内での活動により、生き残りを図るべきである。エコビレッジ運動やミュニシパリズム運動など、地域の中で、生きるための資源を作り出していく活動が増えている。里山を活かしたエコビレッジや、エネルギーの地産地消も重要な視点である。
本会では、2021年に気候非常事態宣言とSDGs宣言を出した。今後は市民参加のもとで、新たな建築の姿を示し、大きな課題に対応する横のつながりを作ることが重要である。支部、支所レベルでの活動も期待している。

会場風景

基調講演の後、パネルディスカッション「徳島で考えるこれからの環境と建築」が行われた。
まず、建築家・新居照和氏(新居建築研究所代表)より話題提供があった。かつて災害が多かった徳島では、伝統的な知恵を活かした住まい方がなされている。農地かつ遊水池でもある吉野川の善入寺島、洪水とともに暮らす藍作の農家住宅等がある。つるぎ山系に残る農家集落を調査したところ、標高の高低差を活かしながら、多様な暮らしを実現していた。こういった集落は地滑り地帯にあり、災害と共存しながら、自然の恵みを得ている。生態系を維持しながら災害にも備える視点も重要である。
次に、林業家・和田善行氏(TSウッドハウス協同組合理事長)より話題提供があった。日本の山は、大部分が伐採期に入っている。木材の自給率を見ると、平成14年(2002年)頃には18.8%まで落ち込んだが、この頃、山林の二酸化炭素固定機能が注目され始め、これを契機に徐々に回復し、現在は41%程度となっている。ここ数年、ウッドショックにより値上がりが続いている。しかし、山まではその影響が出ていない。日本の木材で山と町がマッチングできるようにしたい。
次に、農家・白桃薫氏(フードハブ・プロジェクト共同代表取締役)より話題提供があった。白桃氏の会社は、神山の農業と食文化を次の世代につなぐことを目指している。具体的には、(1)農業で稼ぎ、風景を維持する社会的農業、(2)食堂とパン屋、(3)生産物の販売店、(4)食文化を伝える活動、(5)食農教育である。地域で育て、つくり、食べ、つないでいくことで「地産地食」を進めている。食堂「かま屋」では、神山産の食材の割合を産食率として記録しており、この料理人は、農家が持ってきた食材をもとに何を作るかを考えている。農家が地域にあった農作物を育て、料理人、職人と一緒に、地域の食文化を育んでいくことが重要である。最後に、実務家・丸浦世造氏(三好みらい創造推進協議会代表理事)から話題提供があった。丸浦氏の活動では、三好市に来て活躍してくれる人を呼び込もうとしている。建築物は人が暮らす場であり、意匠よりも、どういう暮らし方にもって行くかが重要である。まちづくりには場が必要で、色々な活動を行っている。阿波おんな100人談話会、四国酒まつり、真鍋屋の改修、箸蔵とことん等である。三好市の課題をまちの外に出すと、課題解決のために企業がやって来る。これを契機に色々な活動を進めているという。逆転の発想とも言える。
この後、糸長氏のコーディネートにより意見交換が行われた。不安定な大地(農林地)を活用し治めることが重要であり、活用しなければ、治められない。その営みがあることで下流の人々は恩恵を受けており、営みがなくなれば元の状態に戻るだろう。過疎化する斜面地はどんどん崩壊している。徳島に多い中山間地域の地滑り斜面で建築が存在し続けるためには、治山治床が必要である。農業、山林の維持管理、そこで得られる材を用いた建築や人の活動は、すべてがつながっている。つなげることが暮らしを維持することになる。治山治床産業を連携して興してほしいと糸長氏は述べた。
この後、パネラーや参加者との意見交換が行われ、終了となった。

[渡辺公次郎/徳島大学大学院准教授]

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