奥能登天領庄屋の大型民家を見る

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奥能登天領庄屋の大型民家を見る

重文民家を見比べる

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奥能登地域では、上時国家住宅、時国家住宅、黒丸家住宅、中谷家住宅、角海家住宅が国指定重要文化財に指定されています。上時国家と中谷家は能登天領地の庄屋役を勤めた家であり、時国家と黒丸家は藩領地の十村役を勤めた家です。角海家は能登天領黒島で廻船問屋を営んだ商家です。これらの建造物はいずれも土地に根付き、往時の生活を偲ばせる屋敷地をもっています。
このうち、中谷家住宅は2022年9月20日付けで国指定重要文化財に指定されました。中谷家住宅の屋敷構えを構成する建物として、主屋を中心として、離座敷、土蔵、奉公人部屋及び東塀、正面門を含めて文化財となっています。特に、土蔵の一棟は内部を総漆塗とする塗蔵で稀有な建物として知られています。中谷家住宅の重文指定によって、奥能登地域で天領庄屋を勤めた家の住宅は中谷家住宅と上時国家住宅の2棟になりました。
今回は、重文指定された、奥能登地域の代表的な民家としての中谷家住宅と、同じく代表的な商家としての角海家住宅、2棟の民家を、そこでの生活を顧みながら見比べる見学会を開催いたします。

開催概要

主催 日本建築学会北陸支部石川支所
日時 2023年10月22日(日)10:00~16:00
(10:00~中谷家住宅、14:00~角海家住宅)
見学先 国指定重要文化財 中谷家住宅、角海家住宅
集合場所 中谷家住宅(石川県鳳珠郡能登町字黒川28号130番地)
※現地集合
講師 村田一也(石川工業高等専門学校教授)
豊島祐樹(石川工業高等専門学校准教授)
小川福嗣(石川工業高等専門学校講師)
対象 現地集合が可能な方(中学生以下は保護者同伴)
定員 20名(申込先着順)
参加費 入館料(実費)
申込方法 10月6日(金)までにE-mailにて、タイトル「2023建築文化週間申込」、本文に「氏名、所属先、連絡先(TEL、E-mail)」を明記のうえ、お申し込みください。
申込先・問合せ 石川工業高等専門学校 建築学科 教授 村田一也
E-mail:k-mrt@ishikawa-nct.ac.jp

開催レポート

 10月22日(日)に「奥能登天領庄屋の大型民家を見る─重文民家を見比べる」と題して、石川県奥能登地域に所在する国指定重要文化財の中谷家住宅と旧角海家住宅の見学会を実施した。石川県内をはじめ大阪府などから社会人や学生を含む、25名に参加いただいた。参加者は、石川工業高等専門学校建築学科・村田一也教授、同校・豊島祐樹准教授、小川福嗣講師から説明・解説を受けながら各家の沿革や建物のつくりについて理解を深めた。
 午前中は、奥能登地域の天領地の一つであった黒川地区で庄屋を務めた中谷家の住宅を見学した。中谷家住宅主屋は、享保6(1721)年に、16石余の石高に相当する、地域の典型より一回り規模の大きい平面形式であった。その後、家格の進展に合わせて上手箇所が拡張され、「能登III型」の鍵座敷を発展させた平面形式を見せる奥能登地域の大型民家の平面となる。その後も居住や家族生活のための空間とした変遷を経て、現在の平面となっていることなどの解説を受けながら見学した。
 午後は、輪島市天領黒島地区の庄屋であり、最大規模の廻船問屋であった角海家の住宅を見学した。旧角海家住宅は、明治4(1871)年の大火を受けて、土蔵4棟のみを残して焼失したが、翌年には建物配置や構造はそのままに復元された。通り庭形式の町屋の間取りで幕末維新期の船主の住宅として、建物の規模や姿をよく伝えているとされている。平成19(2007)年の能登半島地震で大きな被害を受けた後は、土地建物ともに輪島市へ寄贈され、平成23年(2011)年には復原工事を終え現在に至っていることなどの解説を受けながら見学し、旧角海家住宅の成り立ちやその建物について理解を深めた。
 奥能登地域の天領地に所在する庄屋屋敷2棟を比較しながら、その成立過程や建物の特性について理解を深める貴重な機会となった。

[小川福嗣/石川工業高等専門学校講師]

見学会の様子

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