旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)

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近代建築見学会およびシンポジウム

旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)

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今年度は、2020年に建物が解体の危機に瀕したものの、2023年に尼崎市が取得することで保存されることが確定した、兵庫県尼崎市の旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)の見学会、ならびに、同建物の今後の保存活用のあり方を考えるシンポジウムを開催いたします。
旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)は、1900年に尼崎紡績本社事務所として建設された煉瓦造の建物です。設計者は、推定ではありますが茂庄五郎とされています。赤煉瓦を剥き出しにした小さくシンプルな煉瓦造の建物ですが、格調高いデザインを備えています。また、尼崎市内に現存する最古の洋館とされ、経済産業省の「近代化産業遺産」や兵庫県の「景観形成重要建造物」にも選定されています。尼崎市が工業都市として発展したその端緒となる工場の事務所ビルとして、工業都市尼崎の歴史を象徴するシンボルとも言うべき由緒ある重要な建物です。
ところが、2020年6月にユニチカがこの建物の敷地を売却する計画が明るみとなり、建物が解体の危機に瀕しました。日本建築学会近畿支部は、同年9月に保存活用要望書を提出し、2021年3月には尼崎市教育委員会などとの共催により、同建物の保存活用を考えるシンポジウムを開催しました。その後、一時は移築案も取り沙汰されましたが、さまざまな活動が後押しとなり、2023年3月をもって尼崎市が土地を買い取り、建物は敷地とともに現地で保存されるという理想的な結果に落ち着きました。
しかしながら、この建物を今後どのように保存活用するのか、大きな課題が残されています。今回のシンポジウムでは、2021年3月のシンポジウムの登壇者と同じメンバーが再び登壇し、現地保存が決まった同建物の今後のあり方を、建物の歴史的・文化財的価値、耐震補強、活用コンサルティング、改修設計などの観点から再検討いたします。

開催概要

主催 日本建築学会近畿支部近代建築部会、尼崎市教育委員会
後援 ひょうごヘリテージ機構H2O阪神地区、近畿産業考古学会、阪神文化財建造物研究会
日時 2023年10月22日(日)9:30~17:00
(見学会:第1部 9:30~10:30、第2部 10:45~11:45/シンポジウム:13:30~17:00)
見学先および会場 前ユニチカ記念館(兵庫県尼崎市東本町1-50)、
尼崎市立歴史博物館 講座室(兵庫県尼崎市南城内10-2)
集合場所 お申し込みいただいたのち、ご返送する参加証にて行事の詳細とともにご案内いたします。
解説者(見学会) 笠原一人(京都工芸繊維大学助教/日本建築学会近畿支部近代建築部会主査)
桃谷和則(尼崎市立歴史博物館学芸員)
講演者(シンポジウム) 冨永善啓(文化財構造計画代表取締役)
金野幸雄(創造遺産機構(HERITA)理事)
橋本健治(兵庫県ヘリテージマネージャー)
桃谷和則(前掲)
司会(シンポジウム) 笠原一人(前掲)
対象 どなたでもご参加ください。
定員 60名(申込先着順)
参加費 無料
申込方法 FAXまたはE-mailにて、「氏名、所属先、連絡先(TEL、FAX、E-mail)」を明記のうえ、お申し込みください。なお、近畿支部Webサイトからもお申し込みいただけます。
申込先・問合せ 日本建築学会近畿支部事務局
TEL:06-6443-0538 FAX:06-6443-3144
E-mail:aij-kinki@kfd.biglobe.ne.jp
近畿支部Webサイト:http://kinki.aij.or.jp/
旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)
撮影: 笠原一人

開催レポート

 去る10月22日(日)、日本建築学会近畿支部建築文化週間事業の一環として、旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)の木造校舎の見学会およびシンポジウムを開催した。
 旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)は、1900年に尼崎紡績本社事務所として建設された煉瓦造の建物である。設計者は推定ではあるが茂庄五郎とされている。赤煉瓦を剥き出しにした小さくシンプルな煉瓦造の建物だが、格調高いデザインを備えている。また尼崎市内に現存する最古の洋館とされ、経済産業省の「近代化産業遺産」や兵庫県の「景観形成重要建造物」にも選定されている。尼崎市が工業都市として発展したその端緒となる工場の事務所ビルとして、工業都市尼崎の歴史を象徴するシンボルとも言うべき由緒ある重要な建物である。
 ところが、2020年6月にユニチカがこの建物の敷地を売却する計画が明るみとなり、建物が解体の危機に瀕した。日本建築学会近畿支部は、同年9月に保存活用要望書を提出し、2021年3月には尼崎市教育委員会などとの共催により、同建物の保存活用を考えるシンポジウムを開催した。その後、一時は移築案も取り沙汰されたが、さまざまな活動が後押しとなり、2023年3月をもって尼崎市が土地を買い取り、建物は敷地とともに現地で保存されるという理想的な結果に落ち着いた。
 しかしながら、この建物を今後どのように保存活用するのか、大きな課題が残されている。今回のシンポジウムでは、2021年3月のシンポジウムの登壇者と同じメンバーが再び登壇し、現地保存が決まった同建物の今後のあり方を、建物の歴史的文化財的価値、耐震補強、活用コンサルティング、改修設計などの観点から再検討した。

見学会の様子

 当日は午後のシンポジウムに先立って、午前中に建物の見学会を行った。桃谷和則氏(尼崎市立歴史博物館学芸員)と笠原一人(京都工芸繊維大学助教/本会近畿支部近代建築部会主査)の2人が、参加者を2グループ、2回に分けて、建物の案内と解説を担当した。参加者は、煉瓦の積み方や室内の暖炉回りの意匠など、細部まで丁寧に見学した。
 午後からは、冨永善啓氏(保存修理技術者・構造家/文化財構造計画代表取締役)、金野幸雄氏(国土計画家・コンセプター/創造遺産機構(HERITA)理事)、橋本健治氏(建築家/兵庫県ヘリテージマネージャー)と、前述の桃谷氏をパネリストとして、シンポジウムを開催した。司会は前述の笠原が担当した。冨永氏は構造、金野氏は活用、橋本氏は改修、また桃谷氏は尼崎市の担当者の観点から、今後の保存と活用についての課題や展望を論じ合った。
 今回は70名で参加者を募集したが、早々に満席となった。当日は欠席者が8名出たものの尼崎市の関係者を含めて、結局74名が参加した。兵庫県下を中心に、大阪府や京都府、東京都、広島県からも参加者があり、関心の高さが感じられるものとなった。見学会およびシンポジウムの開催にあたり、尼崎市および尼崎市立歴史博物館の方々にお世話になった。感謝の意を表したい。

[笠原一人/京都工芸繊維大学助教、近畿支部近代建築部会主査]

シンポジウムの様子

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