アーバンネット名古屋ネクスタビルと栄のまちづくり

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アーバンネット名古屋ネクスタビルと栄のまちづくり

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NTTが次世代のビジネスシーンを創造するイノベーティブスペースとして、昨年度オープンした「アーバンネット名古屋ネクスタビル」を見学します。最先端のICT技術を詰め込んだ環境と、低層部の公開空地を活用したエリアマネジメントの試みを紹介いただきます。また、2023年4月より、名古屋市が全国に先駆けて施行した「Nagoまちスペース制度」を牽引する社会実験を行うなど、まちづくりの取り組みについても解説いただきます。

開催概要

主催 日本建築学会東海支部事業委員会
日時 2023年11月18日(土)14:00~16:00
開催地 アーバンネット名古屋ネクスタビル(愛知県名古屋市東区東桜1-1-1)
集合場所 申込締切日以降に参加申込者へ連絡予定
対象 一般(小学生以下は保護者同伴)
定員 30名(申込先着順)
参加費 無料
申込方法 9月17日(日)までに、E-mailまたはFAXにて「一般または本会会員種別、氏名、年齢、生年月日、性別、住所、連絡先(E-mailまたはFAX)」を明記のうえ、お申し込みください。
申込先・問合せ 日本建築学会東海支部「建築文化週間 建築ウォッチング」係
E-mail:tokai-sibu@aij.or.jp FAX:052-201-3601
Photo: Forward Stroke inc.

開催レポート

 見学先のアーバンネット名古屋ネクスタビル(以下、ネクスタビル)は、中部電力MIRAI TOWER(名古屋テレビ塔)の近くに建つ商業ビルで、建築主:NTT都市開発、基本設計:日建設計、実施設計・施工:清水建設で建設され2022年に開業した。見学会は11月18日(土)に、参加者29名、説明者・スタッフ12名で開催された。見学会の冒頭に、東海支部事業委員長・伊藤孝紀氏(名古屋工業大学准教授)から挨拶があり、今回の見学会の概要や見どころなどが紹介された。
 続いて、計画段階から約8年間、このプロジェクトで統括的な役割を担ってきた並木達也氏(NTT都市開発)から建物概要やコンセプト、特徴などの説明があった。この計画は、名古屋市で初めて都市再生特別地区の指定を受けたものであるが、当該地区は1987年に勉強会が立ち上がり、2005年にアーバンネット名古屋ビルおよび商業施設Blossa が竣工するなど、一連の開発事業と一体的に整備された。いつでも・どこでも・誰とでも働けるABW(Activity Based Working)をコンセプトに計画され、施工期間(25ヶ月)は、新型コロナによる行動制限の期間と重なっていたが、リモート会議や現場での感染対策を実施しながら工期の遅延なく竣工した。既存施設との回遊性を重視して、建物間を移動する際に商業施設を通るように設計することで、楽しく回遊できるようにするとともに、地上と地下もスムーズに行き来できるように配慮されている。建物周辺には、裏庭・井戸端を意味する「会所」をイメージしたスペースを設け、通路を雁行させることで来訪者に思わぬ気付きを与えられるように工夫している。1階ロビーには屋外から続くアクティブファサードと呼ぶ壁(50m×15m)があり、久屋大通公園と建物をつなぐ役割を果たしている。アクティブファサードは人の活動や情報、季節感を移すアクティビティを持ち、エントランスホールは屋内でありながらも賑わいを生み出すパサージュとなることを目指して、壁一面を建物正面の外観ファサードと見立てている。

並木氏による説明(撮影:森上伸也)

 NTTグループのICT技術を結集し、「まちづくり×デジタル」というコンセプトで、ひとが中心となり成長し続ける地区をデジタル技術でナチュラルに支えるという考え方をしている。建物で働く人や訪れる人に対して「時間と空間の制約からの解放」「新たな発見と創造」「安心・安全」を提供するため、まちづくりDTC(Digital Twin Computing)を導入している。建物の各所に設置されたデジタルサイネージによる執務スペースやトイレ等の混雑状況の表示、快適空間制御による30%のエネルギーコスト削減、フードロス削減のための来店者予測、ワーカーへの食事レコメンドやロボット配送などの実証試験も実施している。
 次に、伊藤氏からエリアマネジメントに関する取り組みの紹介があった。エリアマネジメントは、これまでは時間のある人がボランティア的に取り組んできたが、現在はみんなで稼いでいくことを共通認識として法人化も目指している。ネクスタビルがある東桜・泉エリアは、戦後復興のなかで名古屋テレビ塔(1954年竣工)や久屋大通公園・100m道路(1963年竣工)を核として、昔からエリアマネジメントの活動が盛んであった。しかし、名古屋テレビ塔は、2011年頃に老朽化・地デジ化により存続が危ぶまれたが、あらためて市民や有識者を中心に存続の意義を議論し、名古屋の象徴として久屋大通公園を含めて社交の場として残すことが決まった。不定期で開催されるイベント「SOCIAL TOWER MARKET」は、回を重ねるごとに来場者が増え、売上も伸びている。

1 階アクティブファサードの説明(撮影:森上伸也)

 その後、2班に分かれて建物内を見学した。20階屋上には入居者専用のスカイテラスがあり、名古屋テレビ塔や久屋大通公園を一望しながら、休憩や仕事ができる。椅子にセンサーがついており、使用人数を計測して建物内のデジタルサイネージに混雑状況が表示される。4~19階はオフィスで、北と西の2面が幹線道路に面し、西面からは久屋大通公園が臨める敷地環境を活かして、オフィスは北・西面にL字型に配置している。西面は西陽対策のため屋上に設置した日射センサーによりブラインドを制御している。3階カンファレンススペースには、名古屋で最大人数が収容できる会議室がある。2階にはシェアオフィスと入居者専用のワーカーズラウンジがあり、次世代型先進オフィスにふさわしい交流や創造を促す多機能空間を配置している。今回の見学会では、学生から社会人まで幅広い方が参加し、周辺の施設と一体となった建物の再開発手法や最新のデジタル技術などを知る貴重な機会となった。

[杉浦充/東邦ガス、東海支部常議員]

2 階ワーカーズラウンジの説明(撮影:森上伸也)

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